袋小路
懸念の的のISだが、シリアでは完全な袋小路に追い込まれた形だ。トルコ軍は8月24日にシリア領に侵攻、ISの戦略的な補給地点だった国境の町、ジャラブルスからIS戦闘員を一掃したのに続き、9月に入ってジャラブルス西方の町、アルライ、アザーズを相次いで制圧、ISはさらに南方への撤退を余儀なくされた。
これによってISは西側をトルコ軍とその配下の反体制派、北、東側をクルド人武装勢力、南側をシリア政府軍に包囲され、外部世界から孤立する状態になっている。次の戦闘の焦点はシリア内戦の激戦地アレッポ北東約50キロのアルバーブという町で、これが陥落すれば、首都のラッカ攻略に一気に弾みがつくことになるだろう。
ISの戦場での劣勢は日増しにはっきりしてきており、これまでにイラクの占領地の50%、シリアの占領地の30%以上を失った。米国によると、戦闘員も4万5000人以上が死亡、この中には120人を超える幹部も含まれている。最近も公式スポークスマンで対外テロの責任者であるモハメド・アドナニが殺害された。
しかし、アドナニの後任もすでに補充されたと見られており、まだまだ組織壊滅には遠い。「膨らみきった風船が破裂するように、袋小路に追い込まれたISや呼び掛けに呼応した一匹オオカミが9・11の15周年と“生け贄の祝宴”を狙って大規模なテロを起こす危険性があると見るべきだ」(ベイルート筋)。この警告を軽視してはならない。
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