「弱っちゃうな」と感じた上司
私は会社員の頃、「使えない上司」と思った人はいませんでしたが、「弱っちゃうな」と感じた人はいました。日々の仕事をこなすのですが、右から左に流しているだけで、それ以上のことをしないのです。ルーティーン・ワークはするけれど、面倒なことはしないタイプでした。
今にして思うと、そんな上司にももっとうまく対処しておけばよかったですね。自分ひとりの判断でできる仕事は、どんどんと進めてもよかったのかもしれません。当時の私には、その器用さがなかったのです。会社という組織で生きていくときには、このセンスが必要でしょう。
その後、会社を離れ、ザリガニワークスとして仕事をしていますが、取引先の担当者を見ていると、上司の動かし方が上手いなと感じます。私も会社員の頃、こんなようにしておくべきだったと思うことがあるのです。
ゲームの開発の部署に長くいましたが、予算などの管理をする部署とは、意識の差が生まれやすいのです。テレビ局でいえば、番組をつくるディレクターと、プロデューサーの違いに似ているかもしれません。現場と管理する双方のことがわかる上司だと、現場にいる部下は楽ですね。こういう人こそ、「使える上司」なのだと思います。
現場の責任者から役員に昇格する人はやはり、違います。仕事に対しての強烈な野心を持っているのです。自らの仕事で、何かを成し遂げたい。それで多少なりも、世の中を変えたいといった思いです。
当時、私はこういう人が現場を代表して、役員会に入ってくれると、うれしいとよく思いました。仕事への野心に、人を巻き込む力や魅力が兼ね備えられていると、役員になる可能性が高くなるのではないかな、と感じます。
役員になる人は、20代前半の頃からテンションが高く、キャリアを積んでいくに従い、成功体験を増やしていきます。しだいに「俺流の考えや仕事の仕方」などを作り上げます。それを悪くこじらせてしまう人もいるかもしれませんが、上手くいくと活躍し、役員になっていくように私には見えます。過去に仕えた上司で、役員になった方はそんなタイプが多いのです。スティーブ・ジョブズのような人だったのかもしれません。
地位や収入を欲しいだけならば、部長や本部長でもいいでしょう。役員になる人は、それ以上のものがないと、ツライと思います。この仕事で世の中を変えてやる!といった意気込みです。そのようなものをもっている方が、結果として、部下たちからも「使える上司」と思われるのだと思います。
元気に転がりながらも、決して踏み外さない会社があります。社長が「俺流の考えや仕事の仕方」を強く持っていて、バリバリと進むのですが、時折、こじらせてしまう。それを役員たちが補うことができる会社です。これが、1つの理想ではないでしょうか。
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