2024年11月22日(金)

NO WOMEN NO FUTURE 女性が拓く新時代

2016年9月29日

六本木ヒルズ内のオフィスで働くママと意見交換する出口会長

 「アメリカに追いつき追い越せ」というスローガンのもと、労働集約型の製造業が日本をけん引していた頃は、大企業が「人民公社」のように社員食堂、社宅、保養所に至るまで、ありとあらゆる福利厚生を自社で完備していた。しかし現在は、2次産業からサービス業などの3次産業にシフトし、一つひとつの企業規模は小さくなっているのだから、企業が社員の衣食住の面倒まですべて見られるはずがない。

 大きなテナントビルの中で共通収納や社員食堂があってもおかしくない時代だ。子どもを預けるのも同様で、複数の企業が共同オフィスを設けて対応するというのは理にかなっている。

 藤代 確かに、時代は変わっている。私の前職の企業でも社員食堂も社宅もないが、不都合は特にないと聞いている。福利厚生の充実よりも、社員一人ひとりのライフスタイルに合った働く環境をいかに整えていけるかが、これからの企業経営の肝だと感じている。

出口 日本は高度成長時代の成功体験に未だに縛られている。「男性が外で働き、女性は家で子育てに専念する」というのは、2次産業が前提の時代に生まれた旧来型のモデルだ。もともとは第二次世界大戦の敗戦で東京が焼け野原になり、これから復興していかなければならないというときに、吉田茂という強いリーダーがアメリカにキャッチアップするための策を考えた。当時のアメリカでは、GEやGMなどの大企業が国の経済をけん引していたが、それを見た吉田は、地方から都市に出てきた労働者がトヨタや松下に勤めればこの国は復興を果たし、成長を遂げると考えたのだ。こうして生産性の低い農業から生産性の高い製造業へと全国的な労働の流動化が始まった。

 製造業の理想は「24時間操業」だ。機械は24時間動かす方が効率が良く、止めてしまうのはもったいない。そうすると労働者も長時間働いた方が生産性が上がるので、疲弊した男性労働者は必然的に「メシ、風呂、寝る」の生活になってしまう。それならば性分業して女性は家庭に入った方が、国全体としては効率が良い。

 だから専業主婦を推奨し、「第3号被保険者」や「配偶者控除」など専業主婦を優遇する仕組みができあがってしまった。収入が130万円を超えると、第3号被保険者から外れる、いわゆる「130万円の壁」のように、現在も女性が働く意欲を阻害する制度が残っている。女性活躍社会実現のためにも、旧来型の諸制度を見直し、時代に適合した内容に変えるべきだ。

 藤代 女性の働き方も多様化しているのだから、育児中の子どもの受け皿も保育所だけでなく、多様化すべきと考えている。

 出口 同感だ。一つ思うのは、介護のように保育所でもデイサービスをもっとやればいいのではないか。認可保育所では、通常の保育とは別枠で子どもを受け入れる一時保育という制度もあるが、緊急の場合などに限られている。介護でもデイサービスがあるのだから、保育所もそのようなサービスをもっと提供すべきだ。保育所に朝から晩まで子どもを預けるということではなく、ライフスタイルや子どもの状態に合わせてサービスを利用したいときに利用できる環境が必要だ。


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