2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2016年10月14日

地域が求めているもの探し

 地方創生の必要性が声高に叫ばれる昨今。「地域創造」を掲げて活動を続けてきた三浦さんは、ともすれば企業誘致といった大規模な産業振興策や観光の活性化ばかりが全国で叫ばれる風潮に疑問を呈する。「まず地域そのものが何を求めているのかしっかり考える必要がある。生活者がどういう地域の未来を求めているのか。それに基づいて次の手を考えるべき」

レストランの傍らにたたずむ石像と五ヵ谷の風景

 では五ヶ谷が求める未来とはどんなものなのか。プロジェクト粟の参加者が考えた五ヶ谷の未来は「この地域の文化を皆が長い仕組みで継承していく」というものだった。そのためにレストランや6次産業化で収益を確保。栽培方法は無農薬、無化学肥料にこだわり、良い土を次世代に引き継ごうとしている。

 粟の成功で、飲食店出店の要請が県外から多々あるそうだ。しかし三浦さんは「県外への出店は全然やる気がないですね。今ある三つの飲食店でもういいかなと思っているんですよ」と話す。飲食店はあくまで営農協議会やNPOの活動を利益で支えるためのものであり、そこで大儲けする必要はないのだ。

 「農業をする方の健康寿命がさらに長くなって生涯現役率が高まって、地域全体が経済とは違う意味で豊かになる。五ヶ谷の地域創造は、今後の日本のロールモデルになる可能性があると思っています。屋号を粟にしたのは『一粒万倍』つまり粟を一粒まくと、1万粒が実るという言葉に借りて、自分たちの営みがひとつの種火のような形で普及していったらいいなという思いを込めているんです」

 レストランで収入を得、地域の伝統を守り、コミュニティの機能を維持する――収益確保と地域活性化が両輪となっているプロジェクト粟のこの取り組みは、奈良の地から全国に広がっていく可能性を秘めている。

  
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