ミス・ユニバースを運営していたトランプ財団
一方、ミス・ユニバース協会(本部ニューヨーク)を昨年まで運営していたのは、トランプ財団。両社は持ちつ持たれつの良い関係にあったはずだ。2009年、2010年にはベネズエラ女性が連続で王冠に輝いた。しかも、2009年の準ミスはドミニカ代表。トランプ財団とシスネーロス・グループは、当時ドミニカの観光地での土地売買を同時に展開している。コロンビアなど近隣国では「トランプはベネズエラと利害関係にあるからだ」と不満の声があがっていた。
ところが、トランプは2015年6月の大統領選への出馬表明でメキシコからの移民について「麻薬や犯罪を持ち込む。彼らは強姦犯だ」と発言する。ラテン系アメリカ人との関係は一挙に冷却する。米国のスペイン語放送最大手のウニビション(Univision)は、「ミス・ユニバースは放映しない」、「トランプとの関係を切る」との態度を明らかにした。ウニビションとべネビションは番組を相互に融通する関係にある。こうして、シスネーロス・グループとトランプ財団の関係も悪化。美女を抱えるラテン系メディアの反発もあり、トランプはミス・ユニバース協会を売り払ってしまう。
アリシア・マチャードの本国、ベネズエラの声
アリシアがミス・ユニバースの栄冠に輝いたのは1996年、若干18歳のときだ。その後、わずか数週間で体重が18キロも増え、70キロ近くになる。ボクサーがやるような厳しい減量の反動がきたのだ。ニューヨークではハンバーガーなどのジャンクフード、帰国時にはベネズエラの主食、油で炒めたアレパ(=乾燥トウモロコシを挽いて丸く焼いた生地:現在は経済破たんから一般のベネズエラ人には高値の花)をバクバク食べたのだろう。
ミス・ベネズエラ協会会長のオスメル・ソ―サは「国の恥だ。このままでは王冠を剥奪する」と激怒し、アメリカに滞在する彼女の元にダイエット食の専門家を送った。
一方、トランプはニューヨークのジムにテレビカメラ、記者を多数集めてアリシアが運動で減量する様子を公開した。彼女は太った肉体を晒すことを拒否したが、トランプはミス・ユニバースの所有者。反抗はできない。そのトラウマのおかげで、5年近く拒食症と過食症を繰り返したと彼女は言っている。
ベネズエラの女性に聞いてみると 若い女性(20代前半と30代前半)は「トランプは女性をセックスの対象としか見ていない。酷い言葉を使ってアリシアを侮辱したのよ。それは女性全体への侮辱だわ」。だが、40代のもっと分け知りの女性は「彼女は自分を売り込むためなら何でもやるベネズエラ女の典型なの」
私は何もトランプの応援団ではないが、後者の女性の言葉に思わずうなづいてしまう。