AIファーストが及ぼす影響
「今度の金曜にレストランを予約しておいて」と頼んだ場合、誰がレストランを選択するのだろうか。ソフトウェアエージェントが選んだ候補の中からユーザーが指定するかもしれない。いくつかの条件を伝えたあと、ソフトウェアエージェントに任せてしまうかもしれない。ソフトウェアエージェントの「私の選んだレストランはいかがでしたか」という問いに答えれば、それを学習してユーザーへの理解を深めていく。おかしなレストランを選択したりして、広告主など、他の誰かの手先だと疑われたりしたら、ユーザーの信用を失って使われなくなってしまうだろう。
レストランだけでなく予約サイトなども、どうやってソフトウェアエージェントに選んでもらうかの勝負になる。アプリやサービスを提供するサードパーティは、検索エンジンへの最適化(SEO)ではなく、ソフトウェアエージェントへの最適化(SAO)の戦略を考えなければならない。アプリやWebサイトのデザインやGUIは、あまり重要なものではなくなってしまうかもしれない。
スマートフォンやEchoやGoogle Homeなどのハードウェアだけでなく、ソフトウェアエージェントと対話するための新しいデバイスや仕組みが登場するだろう。ユーザーは自分の車や家電などに組み込まれた、それぞれのチャットボットと対話することになるのだろうか。あるいは、ひとつ(ひとり?)のソフトウェアエージェントに任せて、そのソフトウェアエージェントが車や家電を操作するのだろうか。グーグルが後者を目論んでいることは間違いないだろう。
グーグルのPixelとGoogle Homeの日本発売は未定だが、AlloでGoogle Assistantと英語のテキストで対話することができる。実際に試してみると(出来の悪い)Siriとの差は、まだあまり感じられない。しかし、スタンフォード大学やシンギュラリティ大学で教鞭をとる未来学者ポール・サフォー教授は「世の中を大きく変えるようなことも、臨界点に達するまではゆっくりと変化し、多くの人はその変化に気がつかない」という。ソフトウェアエージェントが臨界点に到達するのに、さほどの時間はかからないだろう。
次回は、来日したポール・サフォー教授へのインタビューを紹介しようと思う。
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