何万個と作っては試行錯誤を繰り返す日々。開発から3年が経ったある日、試作品でカレーを作ったところ、邦裕さんが「味が全然違う! 美味しい!」と大嫌いな人参まで完食したのだ。よし、これならいける! ついにバーミキュラは完成したのである。
さっそく社長の邦裕さんの案内で、バーミキュラの工場見学をさせてもらうことにした。
うひゃあ、真っ赤に燃えたぎる1500度で溶かした鉄を、巨大な容器から鍋の型に職人が手作業で流し込んでいる。遠くから見ているだけでも熱いのに、邦裕さんはすぐ近くに立って「スピードが勝負で3.5秒で流します。4秒じゃ遅いんですね」と説明してくれる。精密加工の工程では、冷めて型から取り出した鍋と蓋を、薄紙1枚ほどの隙間も作らないように何度も計測して削る。そうして精密に整えられた鋳物の鍋は、釉薬を吹き付けて800度で焼かれていくのだ。
昔ながらの鋳物工場と新しいオフィス棟は、仲良く向かい合って建っている。オフィス棟にはコールセンターと、オープンキッチンまである。毎日ここで専属のシェフがレシピ開発を兼ねてバーミキュラで料理を作り、ランチタイムに試食会を開いているのである。
キッチンからぷ~んといい匂いがしてくる。本日のメニューはアクアパッツァ、ポットロースト、カレー、ラタトゥイユ、焼きたてパンと炊きたてご飯。すると邦裕さんが「一緒にどうですか」と言うではありませんか。
社長と副社長も口々に「今日もうまいでいかんわ」と言いながら、社員みんなでキッチンを囲んで試食会を楽しむ。バーミキュラの人気の秘密は、こんなところにもあるんでしょうね。
(写真・阿部吉泰)
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