2024年4月29日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年3月11日

 たしかに、シンガポールやタイで旅行会社を経営する知人も「今でもわれわれにとっては日本人のほうが上客ですよ。中国人客はたしかに土産物は買うけれど、手間がかかる上に文句は多いし、ホテル代等の支出には極めてシブい。おまけに未収リスクがある」

中国人観光客関連で知られていない裏事情

 これは日本の中小業者の間でも起きている問題だが、中国の業者からの旅行代金未収問題はよく発生するという。こうした事情もあって、今、日本での中国人ツアーの「日本側の手配」に積極的に取り組んでいるのは華人系の会社ばかりとの話も聞こえてくる。

 通常、旅行代金は事前徴収が基本である。しかし、最初の数回は気持ちよく事前払いをして信頼を得て、その後は「送金手数料などがもったいないから添乗員に持たせます」などといった挙句に払わずじまい、という古典的な手口で踏み倒されたとの話も珍しくないという。

 「中国人観光客特需で喜んでいるのは、一部の小売業と、かつて大型バスの団体さん専用で栄えた温泉旅館だけですよ。日本の観光業すべての救世主にはなり得ませんよ」

 とは、某大手旅行会社のインバウンド担当責任者の弁である。

 観光で入ってきた中国人が不法滞在するのではないか、とのリスクはメディアでもよく伝えられるが、こうした裏事情は案外知られていない。ほかにも中国人観光客関連の知られていないリスクは多々ある。機会あれば、再びこのテーマで論じたいほどである。

 

※次回の更新は、3月17日(水)を予定しております。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信社外信部記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
◆更新 : 毎週水曜

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