指導者は教育者たれ
浜田さんの講演で、もう一つ興味深い話があった。それは「指導者は教育者たれ」ということだ。負けている試合のハーフタイム、日本のコーチは往々にして怒鳴り、ダメ出しして、沢山の指示を出す。これに対してスペインのコーチはまず前半の良いところを褒め、修正ポイントを一つだけ伝え、後半はきっとできるよとモチベーションを上げてピッチに送り出すという。パフォーマンスの向上にどちらが効果があるか言うまでもない。
このような形で育った子供逹は、また同じようにして次の世代に接していける。その場その場の指導ではなく、ジェネレーションを超えて受け継がれるスタイルは正に教育であるし、文化にまで昇華するものであろう。企業のリーダーにも同じことが言えると思う。慧眼の指導者も、いつかは次世代にバトンを渡す時が来るし、それをスムーズに行うためにも、若い世代の教育に労を惜しんではいけない。そういう努力の中から、今以上のリーダーが必ず出てくるはずであるから。
その意味で、リーダーによる誤った指導で、若き才能が開花することがなく、むしろ成長が阻害されたりするようなことがあれば、それはなんとも切ないことだ。親としてもいたたまれないであろう。また日本企業では仕事の質よりも、勤務時間の長さを問う風潮があるが、それも「正しい努力」の観点からは大いに問題であろう。加えて、指導的立場を悪用して権力を乱用的に行使することで、若き才能を疲弊させ、あまっさえ自らの命を絶つような事態を惹起させてしまうことなど言語道断である。親御さんの無念と怒りの大きさは想像だにできない。厳しく指弾されるべきであろう。
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