インダストリアルIoT
アマナス氏は過去20年でインターネットが世界の10億人をつなげた結果、社会に訪れた変革、情報の迅速な共有、人々のつながりなどを指摘した上で、これがマシン同士をネットによりつなげた場合、どれほどの効果があるか、という問題を提議。アマナス氏はこれを「インダストリアルIoT」と呼ぶ。
現在、各社が開発、プレゼンを進めるIoTは主にコンシューマープロダクツだ。スマート家電、スマートカーなどが中心だが、AIによって産業ロボットをつなげるIoTはこれらとは全く違ったものとなる。例えば、エネルギー管理、オイル、ガス産業、電力などのユーティリティ産業がAIによりつながることにより、現在よりもはるかに効率的なエネルギー採掘、供給、節約が可能になるだろう。AIがビジネス戦略の中核として機能するようになる。
もちろんこれは今すぐ実現できる技術ではない。しかし各社が開発を進めるマシン・ラーニングにより「スマートになった機械、ロボット」が、例えば世界中500億という規模でつながれば、その可能性は無限大とも言える。例としては、ある機械の完璧な履歴を構築し、それを製造者、利用者などがシェアすることができる。いつ、どこで、どのような部品が調達され、不具合箇所が発見され修理され、といった履歴をマシン同士が学び合うことで、例えば近い将来に予測できる不具合の指摘、不具合が起こる前の修理、といったことも可能となる。特に自動車や航空機のエンジンといった人々の安全に直接関わる分野ではこうしたマシン・ラーニングのつながりが重要となる。
ただし実現のためには「信頼性」が大きな要素だ。セキュリティの観点から必要な部分の情報を要とするグループのみが共有できる、といった隔離を確実にする必要性も出てくるだろう。また、コンスーマー・データを処理するには十分なAIの処理能力でも、インダストリアルの分野では不足する。現在使われているノーマルAIからジェネラルAI、さらにスーパーAIの開発が必至となる。しかし、一度実現すれば、例えば情報の共有により現在の製造ロボットが持つ問題点をAIが分析、次世代ロボットのデザインをAIが自動的に行う、という図式も可能となる。この場合、人間による介入は必要最低限となる。
もちろん多くの大企業にはそれぞれの企業文化があり、変化に対応するには時間がかかる。しかし、セクターにこだわらず世界中のロボットが利用可能となり、作業効率が飛躍的に増大する、という社会は10年以内には実現するかもしれない、とアマナス氏は指摘する。
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