AIといえば「ディープ・ラーニング」という言葉がセットのように語られていたが、最近ではこの言葉が「マシン・ラーニング」に置き換わった感がある。どちらもデータを単に処理するのではなく深く分析、ラベリングを行い再整理することでより人間の脳の機能に近づけることを意味するが、具体的な両者の差はどこにあるのか。
「それは処理するデータの量、質による」というのはボストンにあるセンティエント・テクノロジー社のデータ・サイエンティスト、ジュイ・チャンダリア氏だ。現在の定義ではディープ・ラーニングとはマシン・ラーニングの一形態であり、それが適用されるのはナロウ・ネットワーク、つまり分析対象が単一のものである、あるいは比較的単純なものである場合だ。
AIによる法人監査
例えば、銀行の窓口業務を想定する。顧客の要望は預貯金、引き出し、振り込み、新規講座開設その他、非常に限られた業務となる。これをAIに置き換えると想定した場合、ディープ・ラーニングにより可能となる。あるいは企業の法人監査も現在は会計士資格を持つ個人あるいは企業が担当するが、これも作業としては単一であるためAIに置換できる。実際にAIによる法人監査企業を立ち上げようという動きも米国には存在する。
しかし、顧客に対するクレジット信用調査、あるいはDM発送など、基本となるデータベースが非常に大きく処理量が膨大になる場合、ディープ・ラーニングの手法では間に合わない。そこで出てきた考え方がマシン・ラーニングで、より大きなデータセットを人間よりも迅速に処理、的確な答えを導き出すというのがその目的となる。
このマシン・ラーニングが単一のシステムだけではなく他のマシンとの提携が可能となった場合にはどのような未来が訪れるのか。
その可能性をプレゼンテーションしたのはゼネラル・エレクトリクス(GE)社データ分析部門VP、ビーナ・アマナス氏だ。GEは今年はじめに家電部門を中国ハイアール社に売却すると発表して大きな話題となった。ついに中国家電の本格的な米上陸、とネガティブにとらえられたニュースだが、GEにとって家電部分はいわばお荷物となっていた分野だ。これを切り離し、宇宙航空産業などの重工業部門に注力することで企業としての利益を増大するのが売却の狙いだった。