ふと目にとまった緑をみて
広大な陸地を車で走りぬけていく道中、特にサンフランシスコ付近を走って、公園などで緑の木々を目にすると「その昔、レッドウッドの森が北半球の大部分を覆っていたんだなあ」と感慨深かったのを思い出します。西部開拓の波に乗り、サンフランシスコが開発されてきていて、その住宅用に近郊の山からたくさんの木材を切り出したという歴史がありました。緑が生い茂る森を見る事は街の周辺では難しく、それこそ東に向かって数時間かけて移動しないことには雄大な森林をみることが難しいんです。
この森林破壊による二次的要因が今非常に深刻な問題に発展しているようです。去年、カリフォルニアの大樹が1930年代に比べて半減しているという研究が発表されました。過去80年で半減ときくと、その規模たるや深刻な問題であることがわかると思います。
その要因は人の手によるものだけではなく、多岐に亘るようです。以前のコラム『日本の山が美しい本当の理由』で少し触れましたが、山火事などによって小さな木々が排除され、それによって土が肥えることで森が守られるという大きなサイクルがあるんですね。しかしながら宅地開発などで山火事が短時間で鎮火されることで、小さな木々が増え、大きな木と小さな木とで水や養分を取り合うようになると、ただでさえ水の少ないカリフォルニア州ですから、大きな木の打撃は容易に想像できます。
ミューア・ウッズ国定公園へ
サンフランシスコからゴールデンゲートブリッジを渡りますと、ハイウェイの左手一帯には森が広がっています。橋1本隔てるだけでこんなにも自然が残っているんだと驚きながら、目的地であるミューア・ウッズ国定公園へ向かいました。
朝7時頃に到着した時には僕ら以外に車両は1台。ひと気のない静かなセコイヤの森に足を踏み入れます。鳥の鳴き声以外には音はせず、まるで時間が止まったような感覚に陥ります。ここまでとにかく時間に追われるような旅を続けてきたので、芯から休まる思いに浸りました。
セコイヤ、またの名をレッドウッドと呼ばれるこの木は針葉樹で、高さ100m近くにもなる大高木です。世界一の樹高を誇るセコイヤは、同じカリフォルニア州のレッドウッド国立公園にあり、世界1位~3位までをそこで見ることができます。高さは115m程あります。