ヨーロッパから見た中国共産党についての一般的認識を諫める社説です。何を今更、と感じる一部の人たちは別にして、EUの多くの人たちは、中国との間の経済関係は重視するが、外交安全保障の関係については、ほとんど無関心であった、というのが現実の姿でしょう。
現実は逆の方向に
本社説が結論として言う、「世界経済との一体化によって、中国が徐々に開かれ、国際協調ラインをとって、やがて欧米の自由・開放の体制に近いものに変貌してゆくだろう」という期待感は今や全くの期待感にとどまり、現実は逆の方向に向かっている、というのは的確な指摘です。法の支配や自由という基本的価値を否定する中国と今後いかに関与して行くかは、古くて新しい課題です。
習近平を「核心」と呼ぶ体制が今回の六中全会をきっかけに出来上がりつつあるように見えます。党の中のいくつかの「指導小組」なるものの組長になることによって、実質的な権限の拡大を図っているようです。共産党内部のいくつかの個別部門の権限を握ったとしても、党と国家のあらゆる層の権力を牛耳った毛沢東、鄧小平のようなカリスマ的権力を掌握するのは容易ではないでしょう。
党内の権力をめぐる争いは、来年の党大会の人事をめぐって、陰に陽に激しさを増しつつあるように思われます。「反腐敗闘争」もこれから続行されるでしょう。
英国から見て、中国との関係が「黄金時代」を迎えている、というような言い方が前キャメロン政権において使われたことがあります。それに対し、本社説は、法の支配というような基本的価値を重視しない国との間で、経済関係が進展することが両国関係に如何なる効果をもたらすのか、と皮肉まじりに指摘しています。
最近、習近平は、台湾の国民党主席・洪秀柱と北京で会談した際、もし台湾が独立の方向に動くとすれば、「中国共産党は中国人民によって、ひっくり返されるだろう」という言い方をしました。この言葉(「推翻」:ひっくり返す、覆す)は、強い響きを持つものであり、多分、習近平自身の本音でしょうが、中国共産党が抱える前途の多難さを窺わせるものです。
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