ここまでくると、今後のトランプ政権の対中戦略の基本的輪郭がはっきりと浮かんできたように思われる。要するに、アジアの同盟国との関係強化と中国の周辺国との関係改善を図り、実質的に対中包囲網を構築した上で、中国の「核心的利益」となる台湾問題を強力な戦略的な外交カードとして使うということだ。そうすることによって習近平政権に圧力をかけ、南シナ海における中国の戦略的後退と対米貿易の不均衡に関する中国の大幅な譲歩を迫っていくのであろう。
それこそがトランプ次期大統領の考える「敵」の中国に対する「勝利」であろうが、中国は当然、そう簡単に引き下がるようなこともできない。特に、「台湾問題」という中国にとって最も敏感な「核心的利益」が脅かされるような事態となれば、共産党政権には妥協する余地はほとんどないであろうから、トランプ政権成立以降、中国側の激しい反発と米中対立の先鋭化も予測できよう。2017年という年は、アジア太平洋地域にとっての波乱の1年となることはほぼ確実であろう。
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