11月14日、トランプ氏はプーチン露大統領と電話会談を行い、両国関係の正常化に向けて努力する、と合意した。クリミアの一件以来、米ロ関係は悪化の一途をたどってきたが、選挙中からプーチン大統領との「相思相愛」を表明してきたトランプ氏が、次期大統領としてロシアとの関係改善に乗り出すのは自然の流れである。
そして「中国対策」という視点からも、ロシアとの関係改善には大きな意味がある。米国との関係が悪化していく中で、プーチン大統領はオバマ政権との対抗のためにそれまで以上に中国の習近平政権と連携する姿勢を強めたが、それが逆に、中国のアメリカに対する立場を強くした。しかしトランプ氏による米ロ関係の改善は、このような中国に有利な状況を変えていく可能性が十分にあるのだ。
11月17日、日本側との約束通り、トランプ氏は次期大統領として安倍首相との直接会談に臨んだ。この原稿を執筆した12月14日時点で、安倍首相はトランプ氏が対面して会談した最初にして唯一の外国首脳である。会談は1時間半にも及び、安倍首相が大満足している様子からも、実りの多い会談であったことが推測できよう。
そして12月2日、トランプ氏は、フィリピンのドゥテルテ大統領とも電話会談し、来年にもホワイトハウスを訪れるよう求めた。周知のように、以前のアキノ政権時代、フィリピンはアメリカとの軍事的な連携関係を回復し、オバマ政権と手を組んで南シナ海における中国の膨張を封じ込める戦略の一端を担っていた。
しかし今のドゥテルテ大統領の政権になると、度の過ぎたフィリピン国内の麻薬撲滅措置に対してオバマ政権が批判的な立場をとったことから、ドゥテルテ大統領はオバマ大政権と文字通りに「喧嘩別れ」し、中国に寄り添う姿勢を示した。このままではアジアにおけるアメリカの「中国封じ込め戦略」の一角が崩れてしまうところだったが、トランプ氏がフィリピンの国内問題を不問にしてドゥテルテ政権との劇的な関係改善に乗り出したことで、その一角を守ることができそうな兆しが見えてきた。
このように当選から1カ月足らずで、トランプ氏は実によく練り上げた計画とスケジュールで、日韓両国との同盟関係を固め、ロシアやフィリピンとの関係改善に乗り出した。これらの行動は、中国に対するアメリカの外交的立場の強化につながるだろう。習近平政権の外堀を一つずつ埋めていく作業を続けていたのである。
「台湾問題」という本丸に攻め込む
この一連の用意周到な準備の上、フィリピン大統領と電話会談した12月2日、満を持して前述の台湾の蔡英文総統との電話会談を敢行した。
トランプ氏はこの日のツイッターで、蔡氏を「台湾総統(The President of Taiwan)」と呼び、「私の当選祝いのために電話をくれた。ありがとう」とも書き込んだ。
そしてトランプサイドの発表によると、両者は「経済、政治、安全保障での緊密な関係が台湾と米国の間にある」と確認し合ったという。