2022年8月11日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2016年12月15日

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 計画して仕掛けた会談なら、トランプ氏は当然、長年のタブーを破って中国が自らの「核心的利益」と称する台湾問題に関わるこの行動は、虎の尾を踏むが如く中国を激怒させるリスクがあることを十分に承知しているはずである。少なくとも習近平政権からすれば、トランプ氏のこの行動は中国に対する「敵対行為」以外の何ものでもない。トランプ氏があえてこのような行動に打って出たことは要するに、彼は中国との対決も辞さない覚悟をすでに決めていることを意味するのであろう。

 実際、2015年6月16日、トランプ氏は米大統領選への出馬表明の際、中国のことを「敵」だと明確に位置づけた。その時彼は、「私が中国を敵として扱うことが面白くない人間もいるが、やはり中国は敵以外の何者でもない。アメリカは深刻な危機に直面しており、かつて勝ち組だったのは昔話である。最後にアメリカが誰かを打ち負かしたのはいつだった? 中国に貿易でアメリカが勝ったことがあるのか」と、「中国は敵だ」と言い切ったことから自らの選挙戦を始めた。これこそがトランプ氏の中国に対する基本認識であり、12月2日の台湾総統との電話会談という大胆不敵な行動につながったのだろう。彼はやはり「確信犯」だったのである。

外堀を一つずつ埋めていく用意周到なトランプ氏

 大統領に当選してから12月2日の電話会談まで数週間かかったことから、トランプ氏は次期米大統領の行動の重みを自覚した上で、この一歩を踏み出すために周到な準備を進めてきたと思われる。このような視点からトランプ氏が当選後にとった一連の外交行動を眺めてみれば、バラバラに見えるそれらの行動は、一本の太い線で貫かれていることが分かる。その線とはすなわち「中国との対決」、トランプ氏はまさにこの世紀の対決に備えるために、当選以来次から次へと外交上の布石を一つずつ打っていった、と見てよいだろう。

 トランプ氏が打った布石の一つひとつを、順を追って見てみよう。

 次期米大統領に当選した翌日の11月10日、トランプ氏はまず、日本の安倍晋三首相と電話会談を行い、17日にニューヨークで会談を実現させる方向で調整を進めるとした。

 同日、トランプ氏は弾劾される前の韓国の朴槿恵大統領とも電話会談を行い、強固な韓米同盟と米国の防衛公約を改めて確認した。

 当選翌日に行ったこの2つの電話会談の相手は、いずれもアジアにおけるアメリカの同盟国、米軍基地のある国の指導者である点に注目すべきであろう。選挙中の米軍基地負担問題に関する発言や同盟関係見直し論とも言われるような発言をうけ、日韓両国ともトランプ政権下での同盟関係の行方に不安を感じていたことは周知の通りであるが、当選翌日に行った上述の2つの電話会談によって、トランプ氏はこうした同盟国の不安を払拭したと同時に、アジアの同盟国を重視する姿勢を鮮明にした。来るべき「中国との対決」に備えて、トランプ氏はまず、アジアにおける同盟関係を固めておこうとしたのだろう。

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