2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月19日

 中央の指導部にとり、香港問題はほぼ100パーセント国内問題です。中国の国際的な地位が固まるとともに、ますますそうなっています。香港の特別な自治権をどう扱うかは、そもそも共産党の国内統治の基本姿勢に関係するものであり、容易に新疆やチベットに波及します。それゆえ、基本的には厳しめに対応するしかありません。鄧小平は将来の台湾統一も念頭に置いて香港問題を解決しました。香港をうまく処理することで中国の国内の経済建設に香港を活用するとともに、台湾を大陸に近づける誘因にしたいと思っていた節があります。

国内の政局に影響する

 しかし、香港の状況は、台湾をますます大陸から遠ざけるものとなっていますが、台湾を考慮し過ぎた対応をすれば国内に跳ね返ります。ましてや台湾問題も香港問題も、たちどころに国内政局に影響を及ぼす類いの問題です。国内政局が安定からまだほど遠い状況にある現在、どうしても締め付けの方向に向かわざるを得ないのでしょう。

 しかし、香港問題の本質は、香港問題が中長期的には、中国国内においてもいずれ直面しなければならない課題だという点にあります。すなわち、現代化した社会をどう統治するかの問題なのです。中国国内においてすでにその兆しはあり、いずれそのうち、正面から取り組まなければならない問題となるでしょう。こういう視点で香港問題を考えていけば、もっと上手な解決策もあり得るはずですが、党中央にまだその余裕はないように見受けられます。

  
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