2024年7月12日(金)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2010年4月7日

 雇用者報酬の内訳が示していることは、日本企業の収益力が金融危機以前にまで回復しても、雇用と賃金両方の増加をしっかりと実現することは難しいということだ。すなわち、近年の日本企業の収益力は不十分であり、雇用・賃金双方を同時に増加させるためにはもっと収益力を上げなければならない。

 もちろん、低い収益力の原因を全て企業に帰するわけにはいかない。利益率低下の背景に、近年の日本経済の低成長などもあるからだ。日本企業の利益率は経済成長率や物価上昇率と相関があり、日本経済の成長率低下やデフレの深刻化は日本企業の利益率を一層低下させている。

 低収益に止まるツケは大きい。高い収益を実現するためには、さきほどの韓国企業のところで見たように、積極果敢な経営姿勢が欠かせない。それは、精力的な技術開発と新製品の投入であり、旺盛な海外展開に代表されるアグレッシブな市場開拓であり、積極的な企業買収といったことである。

 一方、低い収益力の下での企業行動はおのずと異なる。業績伸長や他社を引き離すためにリスクを取るよりも、失敗してリスクが顕現化することを恐れるようになる。どうも、失われた10年を経て、多くの日本企業では守りの経営に軸足を置く企業風土が醸成されてしまったように見える。

グローバル水準の経営姿勢を

 日本企業には、ぜひ従業員、地域、取引先を大事にする企業風土を維持してもらいたい。しかし、企業に相応の収益力と競争力なくしては、従業員の賃金や福利厚生を充実させることも、国際的な競争激化の中で地域での生産拠点を維持することも、そして国内での取引関係をより強固にすることも難しい。ステークホルダー価値を実現するためにも収益力を上げる経営は欠かせない。

 では、どうやったら収益力を上げる攻めの経営に転換できるのか。それは、グローバル化した経済環境を前提とした経営を行うことに他ならない。すなわち、欧米企業や韓国企業に伍して積極的な市場開拓を行ったり企業買収を図ったりするといった、グローバル水準でビジネスを行うことである。

 そのためには、ROAや経営目標を欧米企業並みとする、社内の組織や人事制度もグローバルな競争環境に相応しいものとする、といった企業体制を根本から見直すことも必要となろう。

 もちろん、それぞれの企業には長年培ってきたやり方があり、欧米企業と同じやり方が一概によいとは言えない。また、企業の収益力向上には、法人税引き下げや規制・既得権益の緩和解消といった政府の後押しが欠かせない分野も多いし、市場の縮小を阻止する強力な少子高齢化対策も欠かせない。

 なぜ、グローバルなやり方を忌避するのか。自らのやり方が良い結果をもたらしているということならば大いに結構だが、いままでの家族的であったり年功序列的であったりする組織や人事制度を根本から変えるものだから、グローバルなやり方に踏み切れないということでは理由にならない。


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