2024年11月5日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月4日

 欧州外交評議会の政策フェローEllie Geranmayehが、11月25日付ニューヨークタイムズ紙掲載の論説にて、イラン核合意の当事者のEU、ロシア、中国はトランプがイラン合意を順守するよう説得すべきで、トランプが聞かない場合には、米国抜きでイラン合意を実行することを明らかにすべきである、と述べています。要旨、次の通りです。

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 イラン核合意は、核拡散防止に貢献したのみならず、米国がイランの核武装を止めるため軍事手段に頼ることを防止した。トランプが安全保障問題についてのブリーフィングを受け、イラン核合意の重要性を再認識するかもしれない。またイラン市場に関心を持つ米国のビジネス界に説得されるかもしれない。他方でトランプは取り巻きのタカ派に説得されるかもしれない。トランプが公約通りイラン核合意を反故にするのには、てっとり早く対イラン制裁の緩和ないし解除を止めるほかにも、イランに新たな制裁を科したり、イランの核活動に合意以上の厳しい条件を課すなど、いろいろな手段が考えられる。

 どのような手段が取られるにせよ、世界はイランに同情するだろう。11月14日、欧州28か国の首脳全員が、米国の動きに関係なくイラン核合意を順守する決意を表した。トランプがイラン核合意を反故にすれば、欧州、ロシア、中国の指導者は米国に裏切られたと思うだろう。そうすれば米国がイラン核合意だけではなく、シリア内戦のように米国が協力を必要とする分野についても、欧州、ロシア、中国と対決する可能性がある。

 トランプがイラン核合意を反故にしようとするのであれば、欧州、ロシア、中国はそれぞれ対イラン制裁の緩和ないし解除を継続すべきである。また欧州の会社を米国財務省による制裁から守るという、大胆な措置を取る必要がある。これは前例がないわけではない。

 トランプがイラン核合意をどう扱うかは、トランプの大統領の資質を占う最初の機会である。それはまた国連安保理の正統性が試される機会でもある。米国民は、国際社会の指導者同様、米国が中東で新たな軍事的危機に巻き込まれるのは望まないことをトランプに明言すべきである。

出典:Ellie Geranmayeh,‘Will Donald Trump Destroy the Iran Deal?’(New York Times, November 25, 2016)
http://www.nytimes.com/2016/11/25/opinion/will-donald-trump-destroy-the-iran-deal.html


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