2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月4日

 トランプは選挙中にイラン核合意は「大失敗」(disaster)で反故にする(dismantle)と言っていました。その上、もともと共和党内にイラン核合意反対派が少なからずおり、またトランプ政権の中枢を占めると思われる人物の中に対イラン強硬派がいるので、トランプ政権発足後にイラン核合意が見直される可能性が高いでしょう。

 イラン核合意は、イランの核開発能力を原則10年大幅に制限し、中東の一層の不安定化に歯止めをかけた画期的な合意でした。しかし、合意に関しては米国、イランの双方の国内に根強い反対があり、国際的にもイスラエルが強硬に反対していて、基本的に脆弱な合意です。事実、制裁解除はイランが望んでいた規模にはなっておらず、イラン国内には強い不満があります。

 これは、米国の制裁解除が米国個人、法人に及んでいないこと、大量破壊兵器、テロ、人権などを理由として制裁は維持されていて、イランで広く経済活動に従事している革命防衛隊が制裁対象とされており、欧州などの企業がそのリスクのためイランとの経済取引再開を躊躇しているなどのためです。

合意が崩れるリスク

 もしトランプ政権が合意の見直しを始めれば、イランの不満はさらに強まり、合意が壊れるリスクが高まります。論説は、米国が合意を実施しない場合には欧州、ロシア、中国が実施を続ければよい、と言っていますが、イランはそれで良しとはしないでしょう。

 合意が崩れてイランが核開発を再開すれば、サウジをはじめ再び中東での核拡散の恐れが高まるでしょう。今度はイスラエルのイランの核施設空爆が実施される恐れがあります。論説が警告しているように、米国自身が空爆をする可能性も否定できません。中東の不安定性が一層高まることは必至です。

 トランプはこのリスクを十分認識すべきです。また欧州、ロシア、中国はそのリスクがあることをトランプに伝え、イラン核合意を反故にしないよう説得に努めるべきでしょう。

  
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