江戸時代の日蘭貿易は、政治的に抹消されたのか?
インドネシア旅行以来、オランダ人に出会うと必ず同じ質問をしてきた。これまで30人以上のオランダ人に質問したであろうか、いずれにせよ誰も知らないという結果である。マンダレーで出会ったエリート学生によると「オランダの歴史教科書ではアジア貿易は最重要事項。したがってインド、マラッカ、インドネシア、台湾、中国など詳しく記述されている。但し日蘭貿易については全く記述がないと記憶している」という。
17世紀~19世紀のオランダのアジア貿易で恐らくインドネシアと同じくらい大きな役割を担い、当時のオランダの国富蓄積に大いに貢献した【友好的対日独占貿易】を歴史教育から意図的に抹殺しているのであろうか。
ヨーロッパの各国の王宮や美術館では、江戸時代にオランダ商船で日本から輸出された伊万里焼などの大きな壺や絵皿、高級漆器が当時の最高級芸術品として麗麗と陳列されている。これを見るだけでいかにオランダ東インド会社が日蘭貿易で巨富を稼いだか容易に想像できる。
未だに根強いオランダの反日感情
1971年昭和天皇が欧州歴訪された際に最も抗議活動が激しかったのがオランダであった。車列に魔法瓶や生卵を投げられるなどの直接行動は記憶に生々しい。
2016年11月マレーシアの宿で同室となったオランダ人ヨプ、69歳は自転車で世界旅行中のインテリ老人である。ヨプによると、オランダでは日本軍の残虐行為を経験した老人たちやその子供の世代は反日感情が強く、次の世代にならないと対日問題や歴史認識を冷静に議論することはできないと断定した。インドネシアでの日本軍の残虐行為のみならず泰緬鉄道建設でのオランダ兵捕虜を含む連合軍兵士への強制労働などが、オランダでは現在まで戦後繰り返し新聞雑誌やTVで喧伝されているという。ヨプ自身は江戸時代の日蘭貿易を知っているし、一般に老人は昔の教育を受けているので日蘭貿易を知っているという。彼は戦後反日感情が強くなったので、歴史教育から日蘭貿易を消し去ったのではないかと推論した。