2024年11月5日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月9日

 米国防省と国家安全保障会議に以前勤務していたフランクリン・ミラーとキース・ペイン元米国防次官補代理が、11月20日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説において、核の先制使用を標榜するロシアが新しい戦略核兵器の開発を進め、核の脅しをしていることから、米国は核抑止力に万全を期するため、核戦力の近代化に努めるべきである、と述べています。要旨は次の通りです。

(iStock)

 米国の核戦略の3本柱――陸上発射、潜水艦発射、爆撃機搭載ミサイル――はいずれも陳腐化しつつある。敵意を持ったロシアが米国の意思と抑止能力を読み違えれば、米国の存立にとって重大な核の脅威となる。

 核の先制使用は、ロシアの政治、軍事拡張政策の重要な要素である。先制使用はすでに2003年にロシアの公式な軍事戦略とされた。ロシアはこの戦略を支えるべく、新しい大陸間弾道弾(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル、弾道ミサイル搭載潜水艦、陸、海、空中発射の核弾頭搭載巡航ミサイルを展開している。

 ロシアはまた15以上の核弾頭を搭載した新しいICBMを開発している。その規模、核弾頭の積載量からいって、核先制攻撃用に設計されたものと思われる。ロシアの高官は、フルシチョフ以来の核の脅しを発言している。

 中国も東、南シナ海で攻撃的政策を実施する傍ら、核戦力を大幅に強化している。ロシアや中国が、米国の核能力の老朽化を意思の欠如と誤解し、侵略を考える危険がある。米国はそのような読み違いを防ぐため、冷戦時代以来の戦略核戦力を近代化しなければならない。

 オバマ政権の第一期には、冷戦後核兵器は意味がなくなったとの間違った考えに立って、近代化を遅らせた。その後近代化計画を始めたが、現在の計画では、新しいICBM、爆撃機、戦略潜水艦、巡航ミサイルは2020年代後半まで配備されない。

 核の近代化推進の決定を素早く行うことが、トランプ政権の課題である。有効な抑止は必要な能力と明白な政治意思から生まれる。米国の安全は、これらを世界、特にクレムリンに対して伝えられるかどうかにかかっている。トランプ政権は手始めに議会と協力して、国防省予算制限法の適用を排除し、国防予算の強制削減を終わらせ、国防省が遅滞なく戦略核戦力の近代化に向かうよう指導すべきである。

出典:Franklin Miller & Keith B. Payne,‘Trump’s Nuclear Deterrence Challenge’(Wall Street Journal, November 20, 2016)
http://www.wsj.com/articles/trumps-nuclear-deterrence-challenge-1479680000


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