世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月9日

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 ロシアが核の先制攻撃を標榜するかたわら、新しい戦略核兵器の開発を進めているので、米国は戦略核戦力の近代化を進め、核抑止力に万全を期するべきである、との指摘です。

ロシアの超大型核ミサイルRS-28

 確かにロシアは新しい戦略核兵器の開発に力を注いでいます。そのいい例が論説も言及している超大型核ミサイルRS-28で、最近発射実験をしたと報じられました。RS-28は15基の核弾頭を搭載する能力を持ち、米国が進めている最新の弾頭ミサイル防衛システムを突破して核攻撃ができるといいます。論説は、RS-28は核先制攻撃用と思われると述べています。

 論説はロシアの核の先制使用戦略を危険視していますが、米国も核の先制使用の原則に立っています。オバマが米国の核の先制不使用を進めようとしましたが、主要閣僚や同盟国から反対され、取り下げた経緯があります。ロシアが核の先制使用を公式の軍事戦略にしているからといって、あまり神経質になる必要はありません。

 論説はロシアの最新戦略核兵器の開発を、先制攻撃の準備であるかのように述べていますが、ロシアの最新戦略核兵器の開発は、基本的には米国に比べて劣っている戦略核兵器の質的バランスを改善するために行われているものと思われます。

 米国との核バランスの他に、ロシアは「グローバル・ストライク」構想をはじめとする米国の高度通常兵器能力の向上に対し、米国ほどの高度通常兵器能力を持っていないので、核兵器によって通常兵器能力の格差を埋めようとしているとも考えられます。

 ロシアが核の脅しをするのは事実です。論説は、ロシアのさる高官がフルシチョフ以来の核の脅し発言をしたと言っています。また米国が今年ノルウェーに330人の海兵隊を展開する計画に対し、ロシアの国防関係高官は、ノルウェーはロシアの戦略兵器の攻撃対象に加えられるだろうとの趣旨の発言をしています。

 しかし、核の脅しが直ちに核の先制使用につながるわけではありません。ロシアが核を先制使用する恐れがあるとの論説のニュアンスは行き過ぎと言うべきでしょう。さはさりながら、米国が核戦力の近代化計画を進める必要があるのは確かであり、事実、計画は実施されつつあります。トランプ政権が核戦力の近代化計画を加速させることが望まれます。

  
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