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2017年2月4日

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風樹茂 (かざき・しげる)

作家、国際コンサルタント

作家、国際コンサルタント(kazakishigeru@gmail.com)。1956年、北海道生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。メキシコ留学後、中南米の専門商社を経て、南米アマゾンの奥地でODAプロジェクトの鉄道建設にかかわる。その後は、シンクタンク、研究所勤務などで、首相向けの政策提言、ODA援助、海外投資、NGOプロジェクトに従事。イスラム開発銀行のコンサルタントも経験し、30数カ国を踏査。石油関連事業でカタール、ベネズエラに駐在。

葛飾区立石 パルこども食堂 月1回土曜日開催
大学生300円 他500円 寺小屋参加者無料

 NPO法人レインボーリボンは「パルこども食堂」と「あおとこども食堂」のふたつを運営している。なぜふたつもあるのか? その目的などを含めて、主催者の緒方美穂子さんに聞いた。

「もともとPTAから派生したNPOですから、こどもの貧困、いじめ、虐待、発達障害などの問題に関心がありました。2014年にNHKの『あさイチ』で豊島区の『要町あさやけ子ども食堂』の活動が紹介されていて、そのあとで、関係者の栗林知絵子さんの講演を聞きに行って、葛飾区でも子ども食堂を作れないかって思ったんです」

 その後、勉強会を開き、ボランティアを募集し、「パルこども食堂」の場所は区の施設の男女平等推進センター(ウィメンズパル)に決めた。そこではハーフタイムという団体が中学生向けの無料学習塾の「寺子屋くらぶ」を開催している。

「『パルこども食堂』の参加対象者は塾で学ぶ中学生にしました。もうひとつの『あおとこども食堂』は誰でも参加できるようにしています。まずは楽しく参加してもらうことが目的です。3、4年後には発達障害の子どもが来て、その人たちを直接あるいは専門家によって支援できるようになれればと考えています」

 食事の手伝いはボランティア保険の対象者だけが可能だという。ボランティア保険とは、社会福祉協議会に登録した「自発的な意思により他人や社会に貢献する無償のボランティア活動」が対象となる保険。団体として加入する(団体参加者の名簿が必要)。掛け金はタイプによるが、年350円か510円と安価である。

 そこで、ちょっとした手土産を持って、「パルこども食堂」を夕方5時に訪れた。周囲には青砥団地や都営住宅がある。キッチンでは、ボランティアの年配の男女が、その日の献立のハッシュドビーフ、長芋の含め煮、大根と白菜の浅漬けをせっせと作っている。給仕してもらうために列に並ぶ。中学生に先生と呼ばれる若者たちが目立つ。上の階の「寺小屋くらぶ」で勉強を教えているNPO法人「Learning for ALL」に属する大学生である。

 私は中学生2名、大学生が3名の席に座る。中学生の女子が気を使って「お茶どうぞ」と勧めてくれる。ハッシュドビーフはなかなかの味で、私の隣の大学生は3杯もおかわりをする。 
参加者は中学生8人、大学生13人、私を含め見学者2人、ボランティアスタッフ9人(男性2名)。この日はクリスマスのプレゼントもあり、和気あいあいとした雰囲気である。

 ボランティアの男性と話すと、「普段はネクタイつけてオフィスにいって、地域と無関係な生活をしているから、ここにくると生きた感じがしますよ」(50代後半)

 「ほかの男はだめだよね。昔の地位がどうだったとか、そんなことばかりいって難しいよ」(60代)。

 食事が終了し、大学生、中学生が去り、あと片付けが終わったあとで、ボランティアによる反省会があった。印象深い声を拾ってみる。

 「中学生は世話されるのが嫌みたいなふうに装っているけど、おばさんが『寒くない、厚着したら』とかおせっかいやいてみると、実はうれしそうだった」

 「最初と比べて子どもたちの様子がまったく違う。人との係りに物怖じしなくなって、自分をあらわすようになった」

 帰宅時に70代にさしかかろうとする女性がこういっているのを聞いた。

 「ここでやって、元気になった。嬉しい」

 「生きる張り合いができた。説明会にはたくさん来たけど、やっている人は少ない」

文京区千駄木 おかえりごはん 
月2回金曜日開催 中学生以下無料、高校生以上300円

 食堂となる坂下会館は、地縁が強く残る谷中商店街の目と鼻の先である。主催しているのは千駄木の町会傘下の地域ネット坂下。この千駄木周辺は都内でも裕福な地域でもある。なぜ、こんなところに食堂が? 主催者の一人、千駄木3丁目北町会の副会長で総務部長の菅完治さんは、町会が所有している坂下会館の有効利用がその目的だったという。

「せっかく持っているのに使っていないことが多いんです。以前、NHKで子ども食堂が紹介されていて、その後、板橋のこども食堂『おかえりごはん』を見学にいきました。普通こども食堂は、開催場所にお金がかかることが多いんですが、会館は町会所有なので無料だし、時間も自由になります。さっそく始めました」

 古民家のような坂下会館を訪れると、狭いキッチンでは、年配の女性3人がせっせとこの日のメニューの空揚げとサラダを作っている。クリスマスが近いので柴又のケーキ屋さんからの差し入れもある。

 参加者は就学前の子供が多い。ボランティアの女性の娘(高校生の姉妹)、50代前後の男性も来る。みな知り合いか? 賑やかである。貧困の解消と関連があるのだろうか?

「ここは、こども食堂っていう名前もつけていないですよ。貧困のためなんて連想が働くと、親子が来にくくなりますからね。むしろ、サラリーマンの旦那の帰りが遅くて、子供と2人きりで食事をして煮詰まってしまうおかあさんたちの月2度のストレス発散の場ですね。貧困対策という意味では、無料学習塾のようなものができないかとは思っていますが。ほら、レストランや食堂じゃ、あんなふうにできないでしょ」(菅完治さん)

 テーブルの下で子供が2人入ってごろごろしている。60過ぎの男性が、ごはんを食べ終わって、皿を持って行こうとするお母さんを見つけると、駆け寄って皿を受け取り台所に持って行く。上げ膳据え膳だ。

 参加者は40人ほどで、大よそだが、子供15人(うち小学生3人)、高校生2名、親13人、大人の男性2名、ボランティア8人というところだった。最高で50人もの親子が参加したこともあるという。

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