WEDGE REPORT

2017年2月3日

»著者プロフィール
閉じる

田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

出産の選択

 Women’s Marchのもう一つの大きなテーマは、女性の体に関することだ。

 トランプが女性軽視の発言を繰り返す一方、避妊薬の処方、人工中絶手術などをするNGO機関、Planned Parenthoodの援助が打ち切られその多くが閉鎖の危機に追い込まれている。共和党はそもそも「人工中絶は殺人」という主張を一貫していて、違法に追い込もうという方向に動いているのだ。

 もちろん人工中絶は、好ましいことではない。だが1973年にこの国で合法的になる前は、追い詰められた女性たちが違法医者の手にかかり、命を落とすということも珍しくなかったという。

 難民に対する同情心ゼロ、どれほど無差別殺人の犠牲者が出ようが銃規制に反対し続ける共和党が、胎児の人権にだけなぜそこまでこだわるのか、筆者にはよくわからない。だがこれが、キリスト原理主義を多く抱える共和党の現実で、堕胎処置をした産婦人科医師が撃ち殺される事件などもたまに起きている。

 ニューヨーク州はいちはやく1970年に合法化し、望まない妊娠をした女性たちの駆け込み寺になっていた。

 「Women’s Rights are Human Rights」(女性の権利は人間の権利)

 「My Body My Choice, My Country My Voice」(私の体、私の選択、私の国、私の声)
あの暗黒の時代が再来してはならない、とニューヨーカーたちは主張するのだ。

思いのほか多かった男性の姿

Women’s March(撮影:Dasha Olshanetskaya)

 このニューヨークでのWomen’s Marchは、実際には参加者の4割近くが男性だった。アンチゲイのトランプ政権に抗議に来たゲイの男性も多かったが、妻や恋人と一緒に来たストレートの男性たちも決して少なくはなかった。

 「I’m with her.」(彼女の連れである、あるいは彼女を支持する、という両方の意味)と中央に書いたプラカードの四方に矢印をつけた男性。

 「Our Daughters Deserve Better.」(我々の娘たちには、もっと良い政府が相応しい)と書いたプラカードを持った、幼い娘を同伴した父親たち。

 その多くが、これまでデモ抗議になど参加したことがなかった、という人々だ。

 アメリカ国家の倫理そのものが問われている今、危機感を持っているのは直接影響を受ける人々だけではないのだ。皮肉なことに、結果的にはトランプ大統領は、アメリカの人々を一致団結させることになったようなのである。

関連記事

新着記事

»もっと見る