2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年2月14日

 ウルフはこの論説で、2つの新造語により、世界の現状を説明しようとしています。一つは「憤慨する国家主義」で、これはグローバル化に取り残された層の怒りを基礎とする国家主義という意味のようです。もう一つは「国民投票に基づく独裁主義」で、選挙に基づいてはいるが、言論の自由の規制などで事実上独裁政治を行うことを意味していると思われます。今の西側世界の潮流が、反グローバル化、反移民で国家主義の色彩を濃く帯びているのは事実です。トランプも「アメリカ第一主義」を唱えるなど、その主張は国家主義的と言わざるを得ません。

明白となった米国内の分裂

 ウルフは米国も、「国民投票に基づく独裁主義」に陥る危険なしとしない、と警告しています。確かに、トランプは彼に批判的なメディアや反対意見を激しく攻撃しています。しかし、ウルフ自身が引用しているように、米国は諸制度がしっかりしており、しかも、その制度を支える人の多くは良識に富んでいます。米国をポーランドやトルコと同列に論じるのは行き過ぎでしょう。

 米国の問題は、むしろ大統領選挙を通じて明白となった国内の分裂ではないかと思われます。トランプは就任演説で、国民の融和について何の言及もしませんでした。トランプの就任式の日、そしてその後の激しいデモが象徴するような分裂は根が深く、当分続くと見られます。

  
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