単発アニメでは、89年の『魔女の宅急便』からスタジオジブリ作品が大ヒットを見せるようになる。その人気がピークに達したのは、97年の『もののけ姫』(興行収入193億円)、01年の『千と千尋の神隠し』(同308億円)、04年の『ハウルの動く城』(同196億円)あたりだろう。しかしスタジオジブリは、2014年の『思い出のマーニー』を最後に、大幅にスタッフを整理し、実質的に制作(≠製作)から撤退した。
一方で10年代に入ってから、ジブリ以外の単発ヒットも多く生まれるようになった。具体的には、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』(2007年~)や、『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)や『バケモノの子』(2015年)など細田守監督作品、『けいおん!』(2011年)、『魔法少女まどか☆マギカ』(2012~13年)、『ラブライブ!』(2015年)、『心が叫びたがってるんだ。』(2015年)、『ガールズ&パンツァー』(2015年)、『聲の形』(2016年)などがそうだ。もちろん『君の名は。』や『この世界の片隅に』もこの単発ヒット作として区分される。
こうした情況から見えてくるのは、10年代とは、ポストジブリ時代にもかかわらず、アニメが完全に日本映画の中心になったことだ。
それは興行成績を見ても一目瞭然だ。右のグラフは、ヒットした日本映画におけるアニメ映画の興行収入だ(日本映画の業界団体は、興行収入10億円以上の作品しか公式発表しない)。
年によっても異なるが、この16年間で(興行収入10億円以上に限れば)38.4%をアニメが占めている。これは世界的にも異例の割合だ。2016年度(※3)は、いまだに上映中の『君の名は。』が興行収入240.2億円(2月5日現在)となっており、アニメの割合は4.7%となった(この割合は『君の名は。』の興行成績しだいでさらに高くなる)。
かように、いまや日本映画界にとってアニメは、ほとんど屋台骨と言っても過言ではない情況にある。
※3……映画の業界団体・日本映画製作者連盟が発表する日本映画産業統計は、年度別のランキングにおいて、各年11月末以降の公開作は年をまたぐために翌年度扱いとされる。よって、いまだに公開が続いている『君の名は。』や『この世界の片隅に』の興行収入は2017年分も2016年度分として換算される。それゆえ、このグラフには厳密さが欠けるが、目安にはなる。なお、1月1日から12月31日までの各作品の厳密な興行成績は発表されない。