私立女子高の英語教師である早瀬美月(25歳・波瑠)は、自宅の新築を請け負っている工務店の現場監督・松島太一(柳楽優弥)と、母の勧めからデートをする。太一が好きな写真家の展覧会を見て回っているうちに、額のガラスに会場の2階からふたりを見張るようにしている母親の顕子(あきこ・斉藤由貴)に気づく。
恐ろしいものを見たように不安にとりつかれた、美月は太一の手を握りしめるのだった。
NHKドラマ10「お母さん、娘をやめてもいいですか?」の第1回(1月13日)の「危険な蜜月」のラストシーンである。
幸せそうな家族が抱えるさまざまな問題
美月は母の顕子と、サラリーマンの父の浩司(寺脇康文)とマンションで3人暮らしである。一家はいま、浩司の実家があった土地に新居を建設中である。
顕子は人形づくりの趣味をするかたわら、パートにもでている。一家はどこにでもあるような幸せな家族のようにみえる。
ドラマの冒頭は、美月が出勤の身支度を整える鏡の前で、ちょっと頭に手をやって内心つぶやくシーンで始まる。
「髪の毛に隠れているが10円玉ぐらいのハゲがある。でも、これは母にはいえない」と。
いわゆる神経性の脱毛症である。
学校の先輩教師とのデートを尾行する、母の顕子の姿がある。水族館のイルカの水槽の前で、スマートフォンで自撮りをするふたり。美月はちょっと逃げ腰である。
「三カ月も付き合っているのに、君はかたいね。僕は真剣なのに」
「三回しかデートしていませんし。もう会うのは止めましょう。学校ではこれまで通りによろしくお願いします」と美月。
彼と別れると、美月はラインで顕子に報告する。
「やっぱりお母さんの言うとおりで、やめることにした」
「よかったわ」と顕子。
背中をお互いに向けあっているのと、スマートフォンに目をやっているので、美月は気づかないが、顕子は通路のすぐそばにいる。