「育つのは本人自身」
当たり前のことですが、忘れてしまう人がとても多い真理の一つです。
やるのも育つのも本人なのですから、伸ばしたければ、その人自身のことを深く広く知ることが大切です。
伸ばしたければ深く広く知る
たとえば、私が子どもの学習について親御さんから相談された時は必ず、勉強以外の話を聞きます。
どんな遊びが好きですか? 小さい時どんな子でしたか? 絵本は何が好きですか? テレビは何を見ますか? 好きなのは戦隊もの? 電車? ポケモン? 人形? プリキュア? どんな口癖がありますか? といった話です。
得意なこと、好んですることが何かを知りたいのです。
お子さんの才能や意識が向かう傾向が見えてくるからです。
ビジネスの場でも同じですね。もし同僚や部下と、仕事の話以外は一切しないとなればどうでしょうか。関係の結び方もよく分からないですし、何よりどんな力を秘めているのかが見えてこないために、新しい力を発揮してもらうには仕事で試すしかなくなってしまいます。
取り返しがつかない失敗をしてしまって、その先のチャレンジ意欲を失わせるかもしれません。またチャンスを与えることもためらうかもしれません。
私が人材育成のコンサルティングをさせていただいているある企業さんでの話です。
Aさんという、仕事に対して一生懸命に取り組もうとはするものの、空回りばかりしてなかなか成果が上がらない社員さんがいました。
熱意が裏目に出て焦るようで、パートさんに業務割り振りをする際も説明の言葉があっちいったりこっちいったりして、「何を指示されているのか全然分からない」とクレームが上がってきます。営業に出ても、「人柄は買うんだけれど、Aさんじゃ段取りが心配だからちょっと別の人を寄こしてよ」と会社に電話がかかってくる始末。
いい人なのは間違いないので、悪く言われることはないのですが、「仕事ができない人」「コミュニケーションが取れない人」というイメージがついていたのです。
「Aさんって本当はそんな人だったの?!」
ところが、マネジメント研修を実施した結果、Aさんの状況ががらっと変化することになりました。きっかけは、二人組になって相互にインタビューして相手を魅力的に紹介する「他己紹介」というワークを、Aさんにもやっていただいたことです。
実はAさん、プライベートではかなりアクティブな方だったのです。バイクのツーリングや釣りなど多彩な趣味をお持ちで、いくつものサークルに入っていて、取りまとめ役を頼まれることもよくあるそうです。地元の居酒屋では、気さくで初めての人ともすぐ友達になれる社交上手として名が通っていました。
そんなAさんの姿が紹介されると、研修会のメンバーからは思わず「なんだAさん、コミュ力高いんじゃん!!!」と驚きの声。
その様子を見ていて、上司のCさんがハッと気づきました。