映画の内容は単純だ。日本統治期に日本が朝鮮と朝鮮人民に対し酷い虐待、搾取、収奪を繰り返してきたかを見せつけ、そんな日本と和解し手を取ろうとする朴正煕政権は民族の背信者であり売国奴であると糾弾し、日韓国交正常化に反対、批判する映画だ。ここで日本統治期の朝鮮弾圧を描写するために登場したのが、前述した「落書き」である。つまり、落書きは朝鮮総連系の団体が韓国と日本の和解を妨害するために制作した映画の中で「反日素材」のための小道具として作り出されたものだったのだ。
この映画を制作した在日本朝鮮文学芸術家同盟は今も活動を続けている。韓国と北朝鮮を往来し、学術会議を開いたり、2016年4月には北朝鮮を訪問し金日成と金正日の銅像を参拝するなどした。映画『乙巳年の売国奴』を撮った監督が1970年代初に北朝鮮に移住したことを考えても、彼らと北朝鮮との「繋がり」が無視できないものであることが分かる。
北朝鮮が韓国と日本を反目させるために捏造した写真を、現在の韓国はその由来も目的も知らないままに公営放送や新聞で繰り返し放送し、教科書で紹介し、日本を批判する材料として利用している。ここまでくると、韓国の現状を批判するより、北朝鮮のプロパガンダ工作の完璧な勝利を褒めるしかない。元々の目的である日韓国交正常化妨害自体は失敗に終わったが、ある意味それよりも恐ろしい、日本への「憎悪」と「反感」を数十年間に渡り韓国人の頭の中に植え付けることに成功しているからだ。
韓国が日本を批判する際に、よく登場する言葉がある。「歴史を忘れた民族に未来はない」という言葉だ。歴史問題で両国が対立するたびにこの言葉を引用し、日本は過去を忘れてしまったと嘲笑してきた。しかし、落書きが捏造であることを告発した日本と、今なお繰り返し新聞、TV、教科書で広め続ける韓国の、どちらを「歴史を忘れた民族」と表現すべきだろうか?
「捏造」はその気になればいつでもそれを認め、修正することができる。だが、捏造のせいで韓国人の脳裏に刻まれた日本に対する「感情」が修正される日はくるだろうか?
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