火消役か、グル(共謀者)か
トランプ大統領は、選挙期間中、「北大西洋条約機構(NATO)は時代遅れだ」と批判し、組織がテロに対応していないと繰り返し主張してきました。それに対して、マイク・ペンス副大統領は、ミュンヘンで開催された安全保障会議で「米国は北大西洋条約機構に対して確固とした支持をしている」と明言して、欧州の懸念の払拭を図りました。ジェームズ・マティス国防長官は、イラクにおける米軍の展開は石油確保が目的ではないと述べ、トランプ大統領の「原油を確保するべきであった」という発言を打ち消しました。ペンス・マティス両氏の役割は火消しです。
ただ、「グッドコップ(良い警官)バッドコップ(悪い警官)」ないし「グッドガイ(いいヤツ)バッドガイ(悪いヤツ)」という役割分担による交渉術を意図的に行っているとすれば、解釈は異なってきます。「悪い警官」及び「悪いヤツ」を演じるトランプ大統領、バノン氏、ゴーカ氏及び大統領補佐官スティーブン・ミラー氏は、交渉相手国に無理難題を押し付け、相手国や個人を攻撃して強硬な態度をとります。一方、「良い警官」並びに「いいヤツ」と見られているペンス副大統領やマティス国防長官は、ソフトな態度を示しながら要求や条件を提示し、相手にそれを呑ませるのです。
交渉相手国は、「良い警官」並びに「いいヤツ」を安心して話せる相手と認識し、彼の要求や意見を傾聴して受け入れます。実はその要求こそが「悪い警官」並びに「悪いヤツ」の本当の狙いなのです。交渉の際、ペンス・マティス両氏の背後には、トランプ大統領と戦略的イニシアティブ・グループの存在があることを強く認識する必要があります。
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