2024年4月26日(金)

WEDGE REPORT

2017年2月26日

失敗は反対派のせいにしろ

 独裁者の敵は、私企業、金持ち、旧支配層、知識人、マスコミ、そして海外ではアメリカ合衆国である。

 電力不足で停電になる、奇病が流行るーそれらは根拠もなく、反対派のブルジョア層とアメリカCIAが仕組んだせいだと言い募る。けれども、ベネズエラの最大の貿易相手国は輸出入とも25%前後を占めるアメリカだ。チャべス派の中には、休暇には親戚などのいるフロリダで過ごし、しかもアメリカで事業を行ったり、資産を所有している者もいる。

敵が攻めて来ると言い続けろ

 「ヤンキーは悪魔だ」「米国のポチのコロンビアが攻めて来る」。「CIAが暗殺計画を練った」。支持率が下がった時は、根拠なくそう言い続ける。ときには軍隊をコロンビア国境に張り付け、米国の外交官を追放し、危機を演出した。

反対派は国外に出てもらえ

 概して知的水準が高い人間、テクノクラート、学生は国を見捨てて国外に出る。心ある政治家、司法関係者、マスコミ人は亡命する。こうして敵の数は減り、政権は盤石になっていく。

メディアを支配下しろ

 前回レポート「民主政権下、こうしてメディアは殺される」を参照ください。

最重要! 最高裁と選挙管理委員会を支配しろ

 2013年チャべスが死去し、別の独裁者マドゥロがあとを引き継いだ。不運だった。15年末頃から原油価格は急落し、30ドル前後に低迷した。私企業激減の影響もあり、生産も低迷し、インフレが襲ってきた。外貨不足で輸入もできない。品不足が蔓延化し、主食さえなく、商店の略奪が始まった。

 2015年末の国政選挙では、野党が大勝利した。167議席のうち112議席を占め、チャべス派はたった55議席にとどまった。すべてが変わる。国民の多くは希望を持った。 

 ところが議員内閣制ではない。独裁者は強大な権限を持ったままだ。

 そこで野党は、独裁者罷免の署名を集め、大統領の信任投票、あるいは大統領選挙に持ち込もうとした。だが、時すでに遅し。後悔先に立たず。18年もファシスト政権を許してきたのだ。

 選挙管理委員会は180万人の署名のうち、50万人に不正があるなど様々な理由で時間稼ぎをし、さらに最高裁が突然、23州と首都圏の選挙人の20%以上の署名がなければ罷免は認めらないと言い出した。12年の任期を持つ最高裁判事32人はチャべス派が多数のときに議会で承認されている。

 こうして、ファシスト政権は盤石になっている。民主主義は形骸化し、三権分立は破壊されている。弁護士の資格を持ちながら、屋台で働く若い女性はため息をついていう。

 「法律も憲法もありはしないわ。チャべス派のやりたいほうだいよ。野党にも幻滅だし、何ら将来に希望はないわ」

ファシズムの教訓

 ファシストを擁護する識者や専門家といわれる人間も出て来るかもしれないが、決して信じてはいけない。ファシストが現れた時、短期の利益のために支持すると、将来国はとてつもない災厄に見舞われる。早急に排除するか、それができなければ自身が国を見捨てて国外に逃れる以外に道はない。今ベネズエラの貧困層は82%、歴史上最高値を記録している。

【筆者講演のお知らせ】
演目 報道されないラテンアメリカと世界
日時/場所 3月10日(金) 19時10分~(18時30分からのIoT関連の専門家の講演終了後)
東京ウイメンズプラザ「第1会議室 B」 (渋谷区神宮前5-53-67)
参加費 女性・学生 無料 初参加の男性1000円
終了後 親睦会あり
主催・問合せ:ビジネス推進機構 野口孝一(携帯:090‐3816‐6245)

  
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