2024年4月20日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2017年3月6日

実際に起きるのはドル安ではなくドル高

 上記のように、日米物価上昇率格差が原因で数年後にドル安になる、というのが常識的な回答なのでしょうが、実はそうなる前に、一瞬でドル高になるのです。

 現在、米国国債の利回りは、日本国債の利回りよりも高くなっています。それなのに、日本国債を買う投資家がいるのは、なぜでしょうか。それは、米国債を買うためには円をドルに替える必要があり、そうなるとドル安円高になって損をする(為替差損を被る)リスクが生じるわけです。そんなリスクを負うくらいなら、多少金利は低くても日本国債を買おう、という投資家が大勢いるのです。

 そうした投資家は、固定相場制という法律が成立した途端、「100円でドルを買って米国債に投資しよう。高い金利を稼いで、満期になったらドルを日本に持ち帰ろう。ドルが100円で売れると政府が保証してくれているので、必ず儲かるはずだ」と考えて米国債を買うのです。

 庶民も、日本の銀行から預金を引き出してドルを買い、外貨預金をするようになるでしょう。そうして発生した巨額のドル買い注文に応じてドルを売るのは日本政府です。日本政府は巨額のドルを持っていますが、日本人の投資家や庶民が一斉にドルを買いに来たら、直ちにドルが不足してしまいます。

 そうなれば、変動相場制の法律は、施行から間もなく施行停止に追い込まれ、ドル高円安になるはずです。そういう予測が可能ならば、世界中の投機家が円を売ってドルを買うかもしれません。そうなれば、変動相場制は数日も持たずに即日施行停止に追い込まれる可能性さえあるわけです。


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