世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月29日

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 この論説はトランプ政権が予測不可能な大統領と良識的な閣僚の組み合わせで、意外に外交における成果を上げている面があると指摘しています。そういう面があることは否定できません。ドイツの兵員増、中国の対北圧力など、結果が出ているとも評価できます。

 しかし、トランプ大統領のもとでこれまでの関係が不安定化し、米国に対する信頼が大きく揺らいでいるというのが全体的な状況ではないかと思われます。TPPからの離脱を含む通商政策の変化、対ロ政策についての不透明さなど、トランプ政権があげた成果と国際秩序に対する害を比較衡量すれば、今まででも、害の方が大きいです。クラウトハマーは個々のプラス面を重視しすぎていると思われます。

 ニクソンは、対中接近、沖縄返還、固定為替制度の変革、ソ連との軍備管理、中東での米の役割強化など、多くのことを成し遂げた人でした。世間が予測していないことをしたという点では、予測に反したことをしたと言えますが、今から考えると、実によく考え抜いたうえで、政策展開したと思われます。ニクソンには、国内政治の経験も国際政治の経験もありました。これに比べ、トランプは思いつき、感情的で、たとえば貿易問題でも数字を無視するなど、ニクソンのような賢明さを全く持っていません。事実を無視する姿勢からは、的確な情勢分析やこれに応じた的確な政策は生まれて来ません。情報機関を敵視する姿勢がみられますが、国家指導者としての資質に疑念を呼び起こします。

 そのうえホワイトハウスには、トランプの側近には、バノン、ミラー、スパイサー、コンウェイなど、事実を重んじず、正直さに欠けることを恥と思わないような者がいます。クラウトハマーがニクソンとトランプを似ているように扱っているのは面白いのですが、大きく見るとピント外れと言わざるを得ません。

トランプはニクソンを尊敬

 トランプはニクソンを尊敬しており、ホワイトハウスには、パット・ニクソン夫人が送った手紙、ニクソンがトランプは大統領になれると言ったという手紙を飾っているといいます。トランプもニクソン同様、偉大な大統領で、米国の威信を高めた人になりたいと思っているのでしょう。しかし“Make America great again”(アメリカを再び偉大に)と言ったからといって、米国が偉大になるわけではありません。それをどう実現するのかが問題であり、それには賢明な政策を懸命に考えるべきでしょう。米国大統領という要職にありながら、メディアとのけんかに時間を使い、いかにも傷つきやすいところをさらけ出しているのは良くありません。

 米の保守派、共和党保守派は、トランプが自分達の政策目標を達成してくれる面とそうでない面を比較衡量してとるべき距離感を測っているのでしょうが、トランプ政権の体質をもっと冷厳に見つめる必要があるように思われます。

  
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