何より、「高齢者が強く求めているのは人と話す機会。利用者からは、『寂しさがまぎれる』、『時間があっという間に過ぎてしまう』という声をよく聞く。単純な状況確認だけではなく、高齢者を元気づける効果も大きい」と長田氏は話す。
日本郵便は、こうした高齢者の見守りサービスを13年から開始した。当初は全国103局でサービスを提供していたが、今では約800局まで増加している(2月1日現在)。
同社トータル生活サポート事業部企画役の西嶋優氏は、「全国に広がる郵便局のネットワークを活用することで、色々な地域で幅広く見守りサービスを提供することができる」とその手応えを語る。今後は「タブレット端末を用いた新たなサービスを導入するなど、本格的に高齢者支援事業に参入し、収益基盤も拡大させていく予定」だと言う。
品物の配達と同時に見守りを
日本郵便と同様に、既存のネットワーク網を生かした見守りサービスを行っているのが、ヤマト運輸だ。
高齢者が電話で地元のスーパーマーケットの品物を注文し、ヤマト運輸のセールスドライバーがその品物を家まで配達する。そして、配達の際に、顧客の健康状態や困りごとを確認して、行政に連絡するというのが、同社の代表的な見守りサービスだ。
このサービスは、岩手県内で働いていたセールスドライバーが、配達でよく顔を合わせていた顧客が孤独死していたことをきっかけに発案し、誕生した。同社の見守りサービスは全国に広がり、16年6月現在で125の自治体にサービスを提供している。
営業推進部プロジェクトマネージャーの山口直人氏は、「高齢者見守りサービスは需要が高く、もはやCSRと言われるような社会貢献活動を通した取り組みではなく、本業としての取り組みになっている」と語る。また、「こうしたサービスを行うことで、高齢者向けの新たなサービスを展開する際にも警戒心を和らげることができる。どのようなサービスを求めているかという声、情報も集まりやすくなる」と、そのメリットを話す。