2024年12月19日(木)

Wedge REPORT

2017年4月5日

一般市民を巻き込んだ徘徊対策

 ALSOKは現在、認知症の人の徘徊対策に特化したサービスを試験的に始めている。「みまもりタグ」というBluetooth無線を発信する軽量の小型端末を活用したサービスで、全国10カ所の自治体と提携して実施している。

「見守りタグ」とそれを取り付ける専用の靴
(写真・SHOGO SECURITY SERVICES CO.,LTD.)

 みまもりタグは、専用の靴に装着でき、それを履いた認知症の高齢者等が、専用アプリをインストールしたスマートフォン(スマホ)や、地域内の多数箇所に設置された「みまもりタグ感知器」とすれ違った際に、スマホや感知器のGPS機能により、自動的にサーバーに位置情報が蓄積される。これにより、行方が分からなくなった時に居場所を特定することができる。アプリをスマホにダウンロードしてくれるボランティアが多いほど位置情報の精度が上がる。

 東京都多摩市では、昨年、ある認知症の高齢者が行方不明になり、未だ見つかっていない。同市は、この「みまもりタグ」による事業でALSOKと提携し、認知症に関する養成講座を受講した1万人を超える認知症サポーターに加え、一般市民にまで、アプリをダウンロードするよう協力を呼びかけている。

 また、徘徊対策をより効果的に進めるために、みまもりタグの事業でALSOKと提携している他の9の自治体のうち、隣接する稲城市にも協力を呼びかけている。

 「民間が入ることで、自治体同士がネットワークを構築するきっかけになった」と多摩市健康福祉部長の荒井康弘氏は話す。

 自治体が「地域による高齢者の見守り」を行うのが困難になってきているなか、全国に広がるネットワークや最新機器を持つ民間企業が高齢者の見守り事業に本格的に参入してきている。今後も高齢化が進行していくなか、こうした官民連携による見守り事業はますます拡大していくだろう。

【シリーズ:認知症700万人時代に備える】
PART1:東京23区の成年後見格差、認知症への支援を急げ
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・前編:品川モデル
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・中編:「品川モデル」構築のキーマン・インタビュー
PART2:先進地域に学ぶ成年後見の拠点作り・後編:大阪モデル
PART3:過熱する高齢者見守りビジネス最前線

  
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◆Wedge2017年3月号より


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