2024年11月25日(月)

こんな子 こんな時 こんな絵本

2010年6月17日

『トマトさん』 (福音館書店) 田中清代 著 インパクト大のトマトさんは子どもに大人気で、ぬいぐるみにもなっている。

 今や、ピーマンは緑とは限りません。トマトは、フルーツのように甘くなり、色も形も種類豊富になりました。「嫌い」でなくなるチャンスは、増えていると思います。実は、私も子ども時代は、トマトの匂いと酸っぱさに負けて食べられませんでした。でも、なんとも大胆な行動をしながら、チャーミングな表情で見つめてくる『トマトさん』(福音館書店)のような本があったら、もっと早くそのおいしさに出会えたかもしれないと残念に思っています。

 専門家によると、子ども自身の偏食のために深刻な栄養不良に陥るということは、まずないそうです。おじいちゃん、おばあちゃんもいっしょに暮らし、食事の用意をするのも食べるのも三世代いっしょの『14ひきのあさごはん』(童心社)の食卓を囲む場面。『ぐりとぐら』(福音館書店)が、森で見つけた卵を使って作ったカステラをともだちみんなと食べるところ。そんな場面を思い出すと、家族や仲間といっしょに、楽しく食べることが食に対する意欲や興味にも繋がると気づかせてくれます。みんなと一緒だから、初めてのものも嫌いなものも食べられた、という想い出の一つや二つ、誰にも心当たりがあるのではないでしょうか。

『ぐりとぐら』(福音館書店) なかがわりえこ 著・おおむらゆりこ イラスト
野ネズミたちが焼き上げる大きなカステラを覚えている方も多いのでは。

 

野菜の成長過程から食物連鎖まで

『いただきまーす』(解放出版)
二ノ宮由紀子 著・荒井良二 イラスト 最小限の言葉で、命のしくみに気づかせてくれる。

 ところで、大根や白菜の花の色や形を見た事ありますか。『やさいはいきている』(ひさかたチィルド)をお手本に、野菜の切れっぱしをちょっと大事にしてみましょう。例えば、大根のきれはしを、水を入れた皿におくと、新しい葉っぱが出て、ぐーんと伸びたら綺麗な花がさきます。家庭菜園などという大げさなものでなくても十分、やさいが生きて育つ様を身近に見る事ができます。

 当たり前のことですが、牛はそのままでは食べられません。私たちが食べ物を口に入れるまでには、実に多くの人の世話になっています。そして、野菜が生きて育つように、人が生きていくことは、食べて食べられての繰り返し(食物連鎖)の中で起こることだと、『いただきまーす』(解放出版)は、わかりやすく教えてくれます。食事をするときの挨拶のことば「いただきます」の意味合いを、改めて考えることにもなるかもしれません。


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