2024年4月30日(火)

ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年6月19日

 いま、日本ではゴミを集めて燃やしていますが、あまり高い温度で燃やせずにぶすぶすやっているので、ゴミ発電といってもたいしたエネルギーはとれないんです。だけど、発想を転換して、外からエネルギーを加えてやると、そのエネルギーを吸い取って分解する。吸熱反応といいます。もともとゴミが持っているエネルギーに高温熱のエネルギーを加えたものが、燃えるガスや燃える油になって出てくるということ。加えたエネルギーは、ガスにすると3倍になり、油にするときには発熱反応で出てしまう分があるので約2倍になります。

●生物が何億年もかけて石油になったのを、先生は人為的にゴミから作ろうとしているわけですね。

——そういう考え方もできますが、もともとの発想はもっとへそまがりで。

 小さい頃、おじいちゃんが廃材を燃やして風呂を焚いたのに入った思い出があります。薪を燃やしたり炭を燃やすのはあたりまえだった。そういう昔のエネルギーの使い方に戻りたい、という感覚があります。日本人は出てきたゴミは残らず使い、畑で使ったわらや、山の下草を払って燃やしてきた。そのスタイルにちょっとハイテクな味付けをして戻るのがいいんじゃないかと。

 もともと人間は、木を育った分だけ切って薪を燃やして何万年もやってきた。たとえばイースター島では、木を全部使い切って、燃やすものがなくなって滅びました。ところがイギリスでは、木を使った後、地面を掘ったら燃やせるもの、つまり石炭があった。木の育つ速度より早く燃料が使える。じゃあそれを燃やそうよということで産業革命が始まった。そもそも石炭や石油こそが代替燃料だったわけです。

 人間は、身の回りに生えて育ったもののうちで余った分を燃やして生きていた。だけど、最近の200年になって、燃やすものが足りなくなって、無理して石炭や石油を掘って燃やすようになった。人間が使っていい資源の量は決まっていると思います。たとえば、米をつくると米と同じ程度の量のわらが出ます。そのわらを燃やしてエネルギーを得る。そのぐらいのエネルギーの使い方が人間にとって適当な量だと思います。

 もちろん、普通にゴミを燃やした場合でもエネルギーは得られます。お風呂をわかしたりご飯を炊いたりするぐらいならそれでいいでしょう。ただ、それでは温度が低いし煙もいっぱい出る。昔はそれですんだけど、いまはクルマも飛行機も乗らないとやっていけません。足りない部分はテクノロジーで補充してやらないといけない。

●900度を出すには核融合じゃなきゃだめなんですか?

——いえ、なんでも相当のエネルギーがあればできます。でも、そのためにガスや石油を使うわけにはいかない。二酸化炭素を出しますからね。それに、900度を出すために燃料を使うと、使う燃料と得る燃料で比べてそんなに得しないことになります。石油や石炭を使わず、二酸化炭素を出さずに900度を出すというのはけっこう難しい。太陽熱では無理でしょうね。そうすると、核融合にいきつきます。

 原子炉でも簡単ではない。一般的な原子炉で出せるのは約300度までです。水で冷やすので、水が沸騰しない限度までということですね。圧力を高くして沸点を高くしますが、どんなに圧力を高くしても約300度までしかいかない。300度の原子炉で電気を作って電熱器で900度を出すやり方でも差し引きするとプラスになるので、とりあえずそれでもいいと思います。これなら太陽光や風力の電気でもいい。もんじゅでも480度です。我が国には高温ガス炉という、世界最高温度の950度が出せる原子炉が動いています。この熱なら使えます。

参考:高速増殖炉もんじゅのウェブサイト(日本原子力研究開発機構)
参考:高温ガス炉HTTRのウェブサイト(日本原子力研究開発機構)

 ゴミを原料にしてできた軽油がいくらになるのか。これはただより安いですよ。ゴミを集めて処理をしてもらうのにいまは税金を払っていますが、それを燃やすかわりにタダで引き取って処理してあげるということですから。この燃料製造場はゴミ処理場です。まぁ、燃やすというよりは高温で蒸すという感じですが。焼き場じゃなくて蒸し場。だから、湿った生ゴミでもそのままでいい。高温で蒸すとゴミが燃えるガスになり、それを燃える液体燃料にできますよ、ということ。

 できた軽油は、ディーゼルエンジンに使えます。飛行機のジェットエンジンの燃料にもなります。もし燃料電池が普及して、今後水素が売れるようになったら、液体にせずガスとして売ったほうがいいかもしれません。


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