大事なのは、ゴミを処理できることと、もう一つは国産の原料から燃料を得られること。つまり、日本が産油国になることができるわけです。ゴミの量で供給量が限られるので、試算すると、さすがに必要な量全部を供給することはできなくて、今の消費量の半分くらいですが。
●日本が産油国になる。しかもゴミを使って。素晴らしいの一言ですね。
——ただ、まだ実験室で試薬レベルのきれいなセルロースやリグニンを使っての検証しかやれていません。実際のゴミを砕いたり分離したりというのはやはり大変だろうとは思いますけどね。細かいコスト計算もやっていますが、熱源としては核融合が最もいいだろうと思っています。
実は、日本みたいに人口が減っている年寄り国なら、いま使っているエネルギーを太陽電池に置き換えるということでもなんとかやっていけるかもしれない。電力需要の伸びは100年間でせいぜい2倍程度で、核融合を無理して取り入れようとはならないかもしれません。
でも、中国とかインドとかアフリカとか東南アジアでは、もっと多くのエネルギーを必要とする国がある。そういうところでは核融合が必要です。原発も売り込めるけど、日本も韓国も濃縮ウランやプルトニウムといった核燃料は供給できないし、再処理だってしてあげられない。核融合炉なら再処理工場がいらないし、燃料も基本的には核物質の制限なく、自前で作れます。
●核融合でも中性子というものが出るんですよね。大丈夫なんですか?
——核融合で発生する中性子は、核融合炉壁を放射性物質にします。それに中性子に当たると傷むので2~3年で入れ替えないといけないのは確かですが、これはタイヤが減ったら交換するのと同じこと。核分裂だと何万~何十万年も放射能を持つものができてしまいますから処理が大変ですが、核融合でできる放射性物質は300年おけば安定化します。長くても500年。セラミックなら100年くらいです。そのあとはほぼ無害な石みたいなものになりますので処理は簡単です。
安全性については、核融合というのは、いってみれば小さい子が自転車に乗る練習をしているようなもので、すぐにぱたっと倒れちゃう。すぐに反応がとまっちゃう。つまり、核融合では暴走なんてできないんです。そういう意味では安全。よたよたの子が自転車で暴走できないのといっしょ。いま段階ではまだ補助輪をつけている状態です。
●でも、現実問題、核融合炉は実用化されていませんね。先生も関わっていたITER(国際熱核融合実験炉)でさえ、まだ建設段階だとか。
——ITERが実際に稼働するのは2019年、実用化は2050年以降の見込みです。2億度のプラズマを出すために加熱のエネルギーを入れないといけないので、発生エネルギーをその何十倍も出さなければいけない、それがなかなか難しい。反応を維持するために投入するエネルギーと反応で得られるエネルギーの比率(エネルギー増倍率)が、ITERではまだ小さいんです。
参考:ITERについてのウェブサイト(日本原子力研究開発機構)
参考:エネルギー増倍率とは(日本原子力研究開発機構)
しかし、さきほどの、ゴミから軽油を作るバイオマス燃料化のための核融合炉だったら、エネルギー増倍率はそんなに高くなくていい。ITERより小さくてローテクのものでいい。コストも少なくてすむ。これなら既存の技術で作れます。また、発電には長時間反応を持続させることが必要でその技術が難しいんですが、燃料化の場合はそれほど長時間反応が続かなくていい。反応が途絶えたらその都度また起動して、またゴミを投入すればいいんです。
●核融合は核兵器にはならないんですか?
——原子力の場合は副産物としてプルトニウムができるので、それで原子爆弾を作れることになりますが、核融合では中性子ができるだけです。ウランやプルトニウムがないと、核融合だけでは爆弾は作れないわけですね。