大谷の回復が遅れれば、彼の入団時に散々議論された「二刀流是非論」がまたぞろ蒸し返される恐れもある。現に、あるセ・リーグ球団の打撃コーチがこう言うのだ。
「球界はもともと保守的なところだからね、以前から『二刀流が長持ちするわけない』『どうせ大谷が壊れたらそこまでだ』と言ってる指導者や関係者はいっぱいいるんです。最近はずっと大谷が活躍してたし、ファンの反発を買いたくないから口にチャックしてただけ。今回の大谷の故障で、そら見たことか、だから言わんこっちゃない、と言い出す人がどっと出てくるはず。これから〝大谷二世〟をつくろうと計画していたチームもあるようだけど、考え直さざるを得ないかもしれないですね」
甲子園の三刀流にも影響が?
そうしたプロ球界の〝世論〟が高校や大学などのアマチュア球界に影響を与える可能性もある。今春の高校野球選抜大会では、優勝した大阪桐蔭の根尾昂が、内野、外野、投手の3ポジションで活躍し、「三刀流ヒーローの誕生」と騒がれた。ショートやセンターでスタメン出場し、リードした試合の終盤には抑え投手として登板。履正社との決勝戦でも最後を締め括る〝優勝投手〟となって、早くも来年秋のドラフトの目玉と言われている。そんな根尾に刺激されてか、大学にも本格的な二刀流を目指す選手がおり、秘かに練習を重ねているところだ。
しかし、それもこれも、プロで大成功した大谷という前例があってこその話。もし大谷が今季絶望、メジャー移籍も無期延期という事態になれば、「将来ある高校生や大学生に二刀流をやらせるべきではない」という世論が沸き上がるのは火を見るより明らかだ。
果たして、大谷と二刀流の未来はどうなるのか。個人的には、彼がふたたび投打の両方で生き生きと活躍する姿を見たいのだが。
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