2024年11月22日(金)

田部康喜のTV読本

2017年5月10日

 親友の香子は、美都と有島の不倫に最初から反対だった。一緒に旅行したように口裏を合わせようと、美都は呼び出してお土産を渡そうとする。「受け取れない」と香子。有島に妻子がいることを知ると、「それって、動物だよ」、「子どもが生まれるまでのお手軽な浮気だったんだよ」としかる。

 香子の助言に従って、有島からのSNSや電話をいったんは拒否する美都だったが、「反省している。おわびにランチをご馳走する」という有島からのSNSを断り切れず、待ち合わせ場所のホテルのレストランに行ってしまう。そして、そのホテルの有島が予約していた部屋で抱き合うのだった。

 有島から夫の印象を聞かれた、美都は「柴犬かな」と答える。

『桐島、部活やめるってよ』で注目された東出・鈴木

 その日は、涼太の会社の友人である、デザイナーの小田原真吾(山崎育三郎)を自宅に招いて夕食会を開く予定だった。美都が手作りの料理を披露することになっていた。しかし、時計をみると、すでに16時半を回っていた。

 タクシーに飛び乗って、あわてて百貨店の地下の食品売り場にかけつける美都。できあいの料理を買い込むのだった。

 食事会は、美都の母親の三好悦子(麻生祐未)の機転をきかした手助けもあって、なんとか無事に終わる。玄関で帰り際に、小田原が美都にいう。

 小田原 「また来てもいいですか?」

 心の中で、美都は(絶対に嫌だ)とつぶやく。

 小田原 「嘘をつくのは下手なひとですね」

 会食中に小田原がなぜ、涼太と親友になったか理由を聞かれて、「危うくって、ほおっておけないんですよ」と、謎の言葉を投げかける。美都の母親の悦子はすでに、不倫に気づいている。美都とふたりっきりのときに、「絶対にバレちゃあだめだよ」と忠告する。

 さらに、美都のスマートフォンを盗み見た涼太は、美都と有島のやり取りから、自分が「柴犬」呼ばわりされたことを知っている。「(夕食会)間に合った」と問う有島に対して、美都は「柴犬くんも喜んで食べてくれた」と返信していたのだった。

 冒頭のように、涼太が「柴犬から秋田犬になっちゃうよ」といっても、美都は気づかない。(あなたはあなたで好きよ)と心のなかでつぶやくのだった。

 涼太役の東出昌大と、有島役の鈴木伸之はともに、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)で注目された俳優である。不倫をめぐる大人のドラマは、いずれふたりの対決に至るのだろう。

 有島の妻・麗華役の仲里依紗も、感情を抑えた役柄を好演している。妊娠、出産をきっかにした検査で、卵巣腫瘍が見つかる。そのことを告げられた有島はうろたえる。

有島 「おまえひとりで病院に行ったの? ひとりで検査を受けて、ひとりで結果を聞いたの?」

麗華 「見えない、そんなところに気づいてくれるとこが好きよ」

 筒井康隆原作の『時をかける少女』のアニメ版(2006年)と映画版(2010年)の主役を務めた、仲里依紗にとっても、不倫の夫の陰で耐える妻の役は挑戦である。

  
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