この熱き人々

2017年5月22日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 「演劇の勉強として能を観ているのに、私が感動しているのは演劇の部分じゃなくて能装束のほうだったんです。ものすごい色が溢れているのに、何て美しくて静謐な世界を創っているんだろうと、とにかくその美意識に驚いたんです」

 演劇ではなく装束と色彩に惹かれている自分を発見した築城は、大学を中退。能装束を制作している京都の西陣を訪れてみたが、多くの色が絡み合った華やかな文様の世界を目の前にしたら、なぜか自分が求めているのはこれではないような気がした。漠然と自分の中にある布を求め、故郷に戻って染織研究所で1年間、糸染めと織物の基本を勉強した。

 「織機なんか見たことも触ったこともなかったですから。何も知らないで飛び込んじゃったんですね。でも、行きたい世界までの間にこんなに大変な過程があると知らなかったからこそ飛び込めたのかも」

 基礎を身につけた後、久米島で修業した築城は、ひとりで紬を織り、さまざまな発見を重ねながら、ついに小倉織という自らの心の色を織り上げるフィールドにたどり着いたというわけだ。

 築城の作品は、多彩な色を使って織りながら、小倉織ゆえにすべての色は決して混ざり合うことがない。それでいて、ぶつかり合うこともなく見事なハーモニーで響き合う。「小倉織で縞の世界を表現する時に一番怖かったのは、隣り合わせの色をどうするかということなんです。普通の織物は、緯糸がすべてを融和させ、抱き込んでちょうどいい色に収まっていくのですが、小倉織は緯糸を跳ね返して経糸がくっきりするので、織り上がった時に隣同士がぶつかるとイヤな感じになってしまうんです。同系色ならそんなこともないんですが、敢えて入れたい色を使った場合、それがどんな顔で出てきてくれるか。イヤな顔で出てくると、できたものに品格がなくなってしまう」

 色をどう使うか、縞のデザインは100色の色鉛筆で画用紙に描いていく。

 「パソコンでやってみたけれど、自分の頭の中のイメージの速度とパソコンの速度が合わなくてダメ。色鉛筆に戻りました」

 デザインは楽しみながら世界を広げられるが、その後に待っているのが「整経(せいけい)」と呼ばれるデザインを織に変える作業。4日ほど工房に寝泊まりしてほぼ徹夜の作業で、デザイン通りに経糸を整えていく。整経が終われば、織機にかけて織りの行程に入る。

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