2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2010年7月10日

──民主党は今回のマニフェストで、天下り禁止、国家公務員人件費の2割削減、幹部職員の降格人事を謳っています。政治主導で幹部を交代させるには、もとの幹部をどこかへ出さなければいけません。でも天下りが禁止なら、省内に抱えなければいけません。それは、省の人件費増を意味しますから、その上、人件費2割減というのは両立しないと思うのですが、いかがでしょうか。

田中秀明氏(以下、田中氏):天下り禁止、人件費の2割削減、降格人事の3つを同時に満たす解はそう簡単には見つからないと思います。大臣たちが望む人間を幹部に登用するためには、現在ポストに就いている者をどこかに異動させなければなりません。ポストを明け渡す人の行き場をどうするかという問題が出てきます。天下りを完全に禁止するのであれば、省内に何らかの身分・役職で残ることになります。そうした人たちの給与は下げるとしても、人件費の総額は上がってしまいます。逆に、人件費を下げるために、独立行政法人などへの現役出向が考えられますが、国全体で見れば、人件費は増加します。結局のところ、天下りを禁止すれば、給与水準を劇的に下げない限り、人件費は上がってしまいます。また、業績をあげられない人間を組織に残せば、モラルが低下します。

 私は、天下りが必要だと申し上げているわけではありません。市場原理を逸脱した押し付け的な天下り、能力や業績とは関係ない給与や昇進、業績を挙げない幹部公務員など、これらは当然ながら是正すべきです。しかし、単に天下りはけしからんと言っているだけでは、問題は解決しません。採用から昇進・昇格、そして退職に至るまでの公務員の人事管理をどう直していくか、冷静な検討が必要です。この1年間、こうした検討が行われたのでしょうか。

──みんなの党の渡辺喜美代表がよく主張していますが、労働基本権を付与すれば、リストラできるという考え方がありますね。民主党もおおむねそういう考え方だと思いますが、条件切り下げを簡単にのんでくれる労働組合はありませんから、労働基本権を与えて、労使交渉で労働条件を決めるようになればリストラできるというのはおかしいと思います。

田中氏:リストラは、現行制度でもやる気になればできます。たとえば事業仕分けによって、予算がなくなった事業を担当している役人は、現行の国家公務員法に照らせばクビにすることだってできます。もちろんそれは簡単ではありませんし、一定のルールが必要ですが、最後は政治の意思の問題です。

 国家公務員人件費2割減についても、いきなり、給与を2割削減することは難しいですが、人件費の2割削減に向けて、なぜ22年度予算を組む時に、5%でもいいから削減しようとしなかったのでしょうか。

 基本権を与えたら、リストラできるというほど事は単純ではありません。現在でも、民間では、リストラするためには、倒産など厳しい条件が必要で、会社が自由にリストラできるわけではありません。基本権の問題は、公務の特殊性と労働者としての公務員の位置付けをどうバランスさせるか、よく考えて対応するべきです。

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