スペインに住む64歳の女性が今年3月15日、米国での体外受精を経て、帰国後に双子を分娩し、大々的なニュースとなった。生殖補助医療が発達した現在、超高齢出産が可能になり、産むことの意義が問われ始めている。
女性は帝王切開で男女を出産し、母子ともに健康な状態だ。しかし、6年前に不妊治療で生まれた長女の養育が放置され、施設保護されていることから、今回の出産には批判も相次いでいる。
生殖補助医療の技術が進むスペインでは、昨年、67歳と62歳の女性2人が超高齢出産を実現。インドでは、06年、ともに74歳の女性2人が出産。07年には、ロシア人女性が79歳で子を授かり、世界最年長記録となった。
一般的に女性は、42歳を超えると、「自らの卵子で」自然妊娠できる確率が激減し、人工授精や体外受精といった不妊治療に望みを託すことが多い。
スペインの公立病院では、不妊治療の年齢を40歳、プライベート施設では、50歳までに設定してはいるものの、その年齢を遥かに超える例外も少なくない。第三者による「提供卵子」次第では、高齢妊娠も十分可能になったのだ。
だが、こうした高齢出産に対し、倫理的な問題に警戒を示す専門家もいる。スペイン生殖医学会のアルフォンソ・デラフエンテ倫理担当は、次のように語る。
「子供を持つということは、教育をしたり、かわいがったり、愛したりと、受精うんぬんよりも遥かに多くのことを意味するのです」
同じヨーロッパでも、不妊治療への取り組みや方針は大きく異なる。フランスやイタリアなど、大半の国々では有償による卵子提供は違法だが、スペインでは、1回の卵子提供につき、約900ユーロ(約10万8千円)が支給される。
しかし、有償による提供は、金稼ぎに走る女性や肉体への悪影響、倫理や宗教の問題が懸念されている。
一方で、無償提供の弱点もある。無報酬で卵子を提供しようと試みる女性の数が減るため、国内に十分な卵子が集まらず、体外受精を求める出産適齢期を超えた女性たちは、たやすく治療が行えなくなる。従って、欧州諸国の女性たちは、スペインや米国に足を運ぶという現象が起きるのだ。