首位争いを続ける広島とBクラスに沈んだ巨人、なぜこれほど差がついてしまったのか。開幕前はこの両チームが優勝争いをするという予想でもっぱらだったから、首をひねっているファンも多いに違いない。
交流戦に入る前のシーズン序盤、対戦成績は広島の10勝1敗。パ・リーグでもソフトバンク-ロッテが10勝2敗と一方的な大差がついているが、こちらは両チームの戦力を考えたらある程度は当然だろう。が、広島と巨人にはそこまでの格差はないはずだ。
打線の中軸は、広島が鈴木誠也、丸佳浩、ブラッド・エルドレッド。巨人が坂本勇人、阿部慎之助、ケイシー・マギー。個々の力量とここまでの成績はほぼ同格と言っていい。先発投手を比較すると、広島はエースの野村祐輔とクリス・ジョンソンが故障や病気などで戦列を離れ、開幕直後からローテーションを守っているのは昨季4勝の岡田明丈、昨季2勝の九里亜蓮のふたりだけ。それに比べると、巨人は菅野智之、田口麗斗、マイルズ・マイコラスと、むしろ巨人のほうがきっちりやるべき仕事をしている先発投手が多い。
それなのに、なぜ巨人は広島に勝てないのか。答えの一端は4月11日、東京ドームでの対戦で示されていたように思う。
巨人が3-0とリードしていた六回、広島は鈴木の安打と盗塁、松山竜平が選んだ四球などで1死一・三塁のチャンスを作る。ここで安部友裕が一塁ゴロに倒れたかと思った次の瞬間、一塁手の阿部がどこへ送球するべきか躊躇した。そのスキを突いて三走の鈴木が本塁を陥れ、追撃の1点をもぎ取る(記録は阿部の野選)。これがきっかけとなって、広島が2個の四球がらみで一挙6点を奪って逆転。その後、巨人もいったん3点を取り返して突き放したものの、リリーフ陣が打ち込まれ、広島に6-9で敗れてしまった。
私は、広島の河田雄祐三塁コーチに鈴木の走塁について尋ねた。あの場面、阿部の動きを見て鈴木にゴーを出したのか、と。「そうじゃありません。阿部がこっち(三塁側)に背中を見せた瞬間、誠也が自分で〝いける〟と判断してホームへ走ったんです。ああいうプレーは、コーチが指示してできるものじゃない」というのが河田の答えだった。
これと似たような場面が繰り返されたのが1カ月半後の5月26日、やはり東京ドームでの試合である。広島が5-1とリードしていた八回、堂林翔太がヒットで出塁し、石原慶幸がバントすると、巨人二塁手・脇谷亮太が打球の処理を誤って(石原の犠打と脇谷の失策)、無死一・二塁とピンチが拡大。さらに1死後、またも阿部がエラーをして満塁とされる。ここから菊池涼介の内野安打でまず痛い1点。その矢先、丸の打った二塁ゴロを脇谷が捕って2死とした直後、阿部、坂本と転送される間隙を突き、三走・石原がホームインして致命的な1点を失った。結果は2-7で巨人の惨敗、広島の大勝である。