2024年5月3日(金)

個人美術館ものがたり

2010年8月13日

 蓬春には後を継ぐ子供がいなかった。6歳下の春子夫人も元は日本画家だったが、結婚後は筆を折り、蓬春の画業を支えた。夫婦二人の静かな生活だったのだろう。77歳での蓬春亡き後は、その作品や膨大な蒐集品の維持に努力する。同時に蓬春の画業の場所であり、吉田五十八の作品でもあるこの家を記念館にと考える。JR東海の初代社長須田寬氏は、画家須田国太郎氏を父にもち、文化への理解も深かったことから、JR東海生涯学習財団により「山口蓬春記念館」が実現する。開館の1カ月後、春子夫人は91歳で逝去した。 

(写真:川上尚見) 

【山口蓬春記念館】
〈住〉 神奈川県三浦郡葉山町一色2320 〈電〉046(875)6094
http://www.jrtf.or.jp/hoshun/

文化勲章を受章した日本画家・山口蓬春が23年間過ごした自宅兼アトリエを利用し、その画業と生涯を後世に伝えたいという春子夫人の思いを受け継いだJR東海生涯学習財団により1991年に開館。戦時中会社寮だったという旧蓬春邸は、東京美術学校時代からの知己である建築家・吉田五十八の手により何度か増改築されている。展示作品とともに、ていねいに手をかけて造られた木造の建物と庭も同時に楽しめて味わい深い。県立近代美術館葉山館がすぐそば。逗子駅からバス・車で約20分、駐車場はないのでご注意を。

〈開〉 10時~17時 *入館は16時30分まで
〈休〉 月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日(土・日曜は開館)、展示替え期間、夏季館内整備日、
    年末年始
〈料〉
 一般〈企画展〉500円/〈特別展〉600円 高校生以下は無料

◆ 「ひととき」2010年8月号より

 

 

 


 


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