中東を読み解く

2017年7月19日

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反サウジ同盟を許す

 カタールの危機に手を差し伸べたのがトルコとイランという地域大国だ。カタールはトルコに多大な投資を行っており、経済的なつながりは年々強まってきたが、昨年4月には軍事協定を締結。トルコ国会は6月7日、カタールがサウジから断交を受けるという苦境に喘いでいる中、軍事協定を承認し、1000人規模の部隊を派遣しつつある。

 トルコのメディアによると、エルドアン大統領が近くカタールを訪問する見通しで、サウジやUAEには強烈なけん制になる。なぜ、トルコとカタールの関係が親密かだが、それは原理主義組織ムスリム同胞団を共に支援してきたという仲間意識が背景にある。逆に言うと、ムスリム同胞団を国家の敵として弾圧してきたエジプトが反カタール陣営に加担している理由も明快だろう。

 イランは今回のカタール危機には、表面的には著しく自制した対応に終始している。しかし、スンニ派アラブ諸国の分裂には内心では、“喜ばしい混乱”として歓迎しているのは間違いない。とりわけ、トランプ米大統領が先のサウジ訪問で「反イラン網」を構築しようとした時に起こっただけに、イランにとってはこの上ないタイミングの出来事だったろう。

 イランはペルシャ湾を横断して海路、カタールに食糧を大量に輸出し、またサウジやUAEの領空から締め出されたカタール航空に領空通過の許可を与えて大もうけしていると伝えられている。

 ベイルート筋は「サウジやUAEはイランを弱体化させたいと思っていたが、自らカタール危機を作り出し、イランとトルコという地域大国による“反サウジ同盟”を作りだしてしまった。サウジは墓穴を掘ったのではないか」と指摘している。

 ペルシャ湾の緊張は米国にとってもマイナスだ。だが、トランプ大統領は一貫してサウジ寄りの姿勢なのに対し、エクソン・モービル時代、カタール指導者と親しかったティラーソン国務長官は話し合いによる危機の収束を図りたい考え。大統領自身「長官とはちょっと考え方に違いがある」と言うように、米政府内部も対応が分裂しているのが現実だ。

 ティラーソン国務長官、マティス国防長官は佳境に入った過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆作戦の拠点になっているカタールのアルウデイド空軍基地の重要性を強調しているが、トランプ大統領は「米軍がカタールから出て行かなければならなくなっても、米軍基地を建設したい国は10カ国もある」とどこ吹く風だ。

 ホワイトハウスが危機の調停に本腰を入れる気のない現状では、危機が長期化し、サウジ連合とカタール、トルコ、イランの反サウジ同盟との対立が激化する恐れが日増しに強まるだろう。2022年のサッカー・ワールドカップ(W杯)カタール大会の開催も本当に危ぶまれる事態になってきた。
 

  
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