たとえば、日本の強みであるロケット。現在は小型の固体燃料ロケット開発が進んでいる。小型ロケットを整備すれば、小型化傾向にある人工衛星をミッションごとに細かく打ち上げることができるようになり、費用面の負担が少ない。あるいは、さまざまな衛星が送信してくるデータを一括して利用しやすくするための促進プラットフォーム構築。現在、衛星が送信してくるデータは、各省庁がそれぞれで利用しており、共通プラットフォームや規格がない。これを解消するために、2012年までには、バーチャルセンターを立ち上げる予定だ。
経済産業省が管轄する無人宇宙実験システム研究開発機構(USEF)では、民生部品の宇宙利用に実績を重ねるため、技術実証衛星の打ち上げ、運用を行ってきた。今年6月には実証衛星2号機「SERVIS-2」を打ち上げ、厳しい宇宙環境のなかで、民生部品の機能・構造の安定性を実証するためのデータ収集を目指している。来年には、続く「ASNARO」打ち上げる予定だ。同機構の三本松進専務理事は、「機能・構造の実証はメーカーに強みをもたらし、国のものづくり力を高める」と宇宙イノベーションの必要性と役割を語る。これまで衛星を販売した経験のない日本にとって、官民一体の衛星販売に付加価値をもたらそうとする狙いだ。
ようやく、国によって宇宙利用の青写真が描かれはじめたが、点在している宇宙利用の取り組みが、面展開するにはもう少し時間がかかりそうだ。今後、きちんと実効性が期待できるプロジェクトにプライオリティが置かれるだろうか。
後篇では、それが目に見える形として表れる、2011年度宇宙予算の概算要求額を、専門家の目を交えながら見ていきたい。
*後篇(2)は、9月17日(金)公開予定です。
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(北海道大学准教授・鈴木一人氏)
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