――一方の少数派の家事・育児に日常的に参加している2~3割の男性は、具体的にどんな家事をしているんですか?
藤田:さまざまな調査を見ると、ゴミ捨て、食べた食器を片付ける、子どもをお風呂に入れる、といったものが多いようです。ただ、ゴミ捨てに関しては、家事ではないという議論もありますが……。
ただ、こうした育児や家事に積極的に参加する男性でも、料理と子どもがうんちをした際のおむつ替えをしないというのは調査をしているとよく聞きます。
――女性でも結婚してから経験を積んで料理が上手になっていく人は多いと思いますし、男性が特別料理ができないということはないと思いますが、なぜでしょうか?
藤田:料理をつくらないと言い張る男性には2パターンあるように思います。1つ目は、料理という家事を自分がすること自体が面倒臭いと考える男性。もう一つは、母親が専業主婦だった男性に多いのですが、女性の手料理に愛情を感じるという男性です。そうなると、妻は仕事帰りに買って帰ったお惣菜で夕食を済ませるわけにはいかなくなります。いまの大学生を見ていても、昼食にお弁当を持参する男子学生は珍しくなく「うちの母ちゃんの弁当が一番うまい!」なんて口にします。弟や妹が学校にお弁当を持っていくので、親が一緒につくってくれたり、父親の収入が下がっているから、お弁当で節約しようというのもわかるのですが、一定年齢以上の人たちはびっくりしますよね。
諸外国を見ると、アメリカは夕飯にテイクアウトやレンジでチンしたものを食べたり、ヨーロッパでは夜は冷たいものをメインに食べたり、中華圏では屋台などで夕食を済ますことが多く、日本ほど女性の手料理にこだわってはなさそうですね。
――共働き社会の先輩である欧米並みに父親が家事・育児に参加するにはやはり長時間労働の改善が必要でしょうか?
藤田:これは私の仮説ですが、長時間労働さえなくなれば、現在でも家事・育児に参加している2~3割の男性は自動的にもっと参加するようになるでしょう。そのためには、ヨーロッパのように残業時間を1日1~2時間に法律で制限することも検討する必要があります。
ただし、まったく参加しない男性の意識を変えるのはなかなか難しいのかなと思います。
――早く帰れない、育休が取りづらい状況というのは、管理職の人たちが、時代が変化していることを意識していないことも原因かと思います。社員が積極的に家事や育児に参加できるように取り組んでいる企業はあるのでしょうか?
藤田:くるみんマーク(註「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けた証)が導入されたり、先進的な事例に取り組んでいる企業はあります。ただ、企業のトップがそういった意識を持っていても、現場レベルまで浸透しているかは微妙です。働き方改革に関して、国がもっと力を入れるべきだと思いますね。
それよりも、企業に対しては早く帰らせたほうが利益が上がる、といったインセンティブを与えないと難しいと思います。