ビジネスにも効く!アニメ監督のマネジメント術

2017年9月7日

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藤津亮太 (ふじつ・りょうた)

アニメ評論家

アニメ評論家。'68年、静岡県生まれ。'00年からフリー。アニメ作品・アニメ業界への取材を行っている。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)、『声優語』(一迅社)、『ガルパンの秘密』(廣済堂新書、執筆は一部)などがある。TV番組に出演したり、複数のカルチャーセンターで講座も担当する。

『進撃の巨人season2』でマネジメントに徹することができたワケ

――よい解決方法は見つかりそうですか?

荒木:『進撃の巨人season2』は総監督という肩書になっていますが、前シリーズで助監督だった肥塚正史さんに絵コンテの事前チェックをお願いしていたんです。まず肥塚さんと方向性を打ち合わせて、その後肥塚さんがチェックしたものを俺が見て、気になったところを修正する流れにしました。すぐに「俺が俺が」とプレーヤーになろうとするのを我慢して、いちど肥塚さんのフィルターを通してから、それを底上げする、という意識にしました。

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 これは肥塚さんという、絵でも、演出でも信頼できる人がいたからできたことですが、最もボトルネックとなっていた絵コンテ作業が効率化され、制作もスムーズに進んだうえに、ちゃんと自分の作品だと誇れるものに仕上がったんです。設定関係や本編作画の確認も、ほぼ肥塚さんにお願いしちゃってましたが、かといって「これは思い通りにいかなかった。俺の作品じゃない」と思うところはひとつもありませんでした。自分が関わった中で、いちばん上手く回せた作品だと思います。

 でも、それは制作スタジオである「WIT STUDIO」取締役の和田(丈嗣)さんと中武(哲也)さんが現場の声を受けて、「荒木で現場が止まってしまう現象をいかに解決すべきか」と考えてくれた結果なんです。一方で、「どうしてもプレーヤーをやりたければ、『カバネリ』の新作で」という道まで用意してくれました。

 そうやって自分をマネジメントしてくれる人がいたおかげで、今回はうまくやれたんだと思います。
 

――少しずつ、荒木監督自身が考える「あるべき姿」に近づけている感じでしょうか?

荒木: TVシリーズ初監督の『DEATH NOTE』の時は、現場の雰囲気をすごく悪くしてしまったので、少しずつできるようになっていると信じたいです。よいリーダー、よい監督になりたいと思ってるので……。おそらくこの連載の読者のみなさんと同じ気持ちなんだと思います。

 なので、俺の話はマネジメントの難しさという“壁”にぶつかり、必死にもがいている人の現状報告だと思っていただければ。(笑)
 

――最終回らしいお話にまとめていただき、ありがとうございました。
 

★ 今回のポイント ★

信頼し任せられる人を起用する


「いつまでもプレーヤーであり続けたい」と願う気持ちは、多くの方がお持ちかと思います。荒木監督は終始ユーモアを交えて語ってくださいましたが、肥塚さんの存在がなければ、荒木監督がマネジメントに専念するきっかけは訪れなかったのかもしれません。かつて南海ホークス時代に選手兼監督を務めた野村克也氏も、プレイング・マネージャーの難しさについてこちらで言及しています。野村氏は監督に就任する際、自身が絶大な信頼を寄せる元メジャーリーガーをヘッドコーチに迎え、それがチームにリーグ優勝をもたらしたと振り返っています。マネジメントに徹するにせよ、プレイング・マネージャーとして続けるにせよ、信頼し任せられる人を身近に置くこと。それが、プロジェクトを成功に導く秘訣かもしれません。
 * * *

「ビジネスパーソンにも効く!アニメ監督のマネジメント術」はこれで最終回となります。貴重なノウハウを惜しまず披露してくださったアニメ監督の方々に、そしてこの連載を楽しみにしてくださっていた読者の皆様に、心より御礼を申し上げます。(編集部より)

取材・執筆:藤津亮太(アニメ評論家)
'68年、静岡県生まれ。'00年からフリー。アニメ作品・アニメ業界への取材を行っている。著書に
『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)『声優語』(一迅社)『ガルパンの秘密』(廣済堂新書、執筆は一部)などがある。TV番組に出演したり、複数のカルチャーセンターで講座も担当する。


  
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